言語教育支援 ネットワークシステム
Lang-On

 

2003-10-06

尾上泰夫

 

インターネットをはじめ、IPネットワークで映像を扱えることは、現実的な技術となってきたが、教育分野では実用となるアプリケーションが少なかった。
テレビと同じに、ただ映像を見せる機能だけでは既存の教室にあるテレビや、LL教室のような機能をリプレイスする必要が無いからだ。
今回紹介する「Lang-On」は、言語教育に求められる「見る、聴く、書く、話す」を実現するために最適化されているのだ。
ビデオ教材を活用して書き取り、返答。などの実習を行うことを目的としたサーバークライアントシステムで、コンテンツの作成が大変に簡便な点が評価される。

特に生徒側の機敏な動作と音声入力を重視しているため、Webブラウザーではなく専用のアプリケーションとなっているのがネットワークソフトとしては珍しい。マイクロソフト「ドットネットフレームワーク」をベースに開発しているため高度なネットワーク機能を標準で搭載している。


特に学校で求められる機能として、生徒の端末にデータを残さずに、自動でサーバー側へ一括管理する手法などは、音声データをクライアントマシンで取り込む宿命だけに、重宝する機能だ。


特徴
ビデオ表示(WindowsMedia9)を基本にAVI、MPEGなどのフォーマットに対応する。
教室などの広帯域が使用できる場合は高品質な映像を利用できる。
教師情報表示(ビデオに同期)文字情報とHTMLでの画面情報を活用。
生徒の実習(書き込んだ文字、話した音声など)を記録

実際に試用してみよう。
学籍番号で管理されたシステムにネットワークでログインする。
教師用の画面には利用中の生徒の名前が表示される。

重要なところは教師が簡単にコンテンツを作成できる点だ。
教材となるビデオを見聞きするガイドを簡単に作成できる。
教師画面で直接文字を打ち込んだり、URLを指定してWebとの連動も可能だ。
ビデオにテロップを入れるような感覚で見やすい表示を任意のタイムコードアドレスへ配置することが出来る。しかも直接その場で打ち込む事が出来るので、生徒への作業指示が容易に的確にできる。

生徒の文字の書き取りもビデオに自動的に同期する。書き起こし学習に便利なビデオの数秒巻き戻し機能もある。これはテープ起こしにも利用できる。

注目は、ビデオの音声と、生徒が録音した音声を同時にミックス再生して、バランスも簡単に調整できる点だ。実はこの機能を実装するネットワーク教材は、いままでなかったのだ。
生徒の話した言葉もビデオに同期するので、会話形式の記録が可能だ。

また、コンテンツの管理がフォルダー単位で行えるために整理が簡単だ。

実際の授業では生徒の学習記録が自動的に作成されて、指定の場所へ遠隔保存される。生徒のパソコンには残さないので、すぐに次の生徒が利用できる。
保存された生徒の記録は、教師用のコンテンツ管理画面から、使用する教材を指定、指示を編集、生徒の記録を管理できる。

教師用のパソコンは、必ずしもサーバーである必要はないが、コンテンツを保管したり、生徒の記録を保管する場所は、任意のファイル共有サーバーを利用する事で安定した運用が可能だ。
コンテンツ再生の能力は、端末の処理能力と、ネットワークの転送能力に依存する。

簡単にコンテンツが制作できれば、教材の陳腐化が防げるだけでなく、肌理細やかな指導のために独自の狙いを盛り込む事も出来る。
見る、聴くが同じビデオを使用しても、まったく違う教材に仕上げる事が出来るのだ。
Lang−Onは、生徒の書く、話す能力を最大限に引き出す教材を簡単に作り上げる事が出来る。

コンテンツ制作のフローと、生徒の作業記録管理

台本の作成(実習の段取り)をまとめてみよう。
Lang−Onは、見せたいビデオと同期して、さまざまな作業指示を生徒に提供できる。どの場面で、どんな作業をさせるのかを簡単に作成することができる。

基本となるビデオ教材の用意。
使用するビデオファイルのフォーマットはWindowsMediaを採用している。WindowsOSに標準で組み込まれているフォーマットなのでインストールが簡単だ。ビデオテープの状態からは適切にエンコードを行っておく。
ファイルをネットワーク上の帯域が確保できる場所へ配置する。
アクセスする生徒数×ファイルの圧縮転送レート=総転送レート
 
実習時間を考慮してビデオを選択、または編集する。
 ネットワークの負担が軽い場所へ素材を配置。
 コンテンツはディレクトリで階層管理できる。
 指示によって、生徒はビデオを停止したり、反復再生を行い、実習を進める。
 実習時間は必ずしもビデオの時間では終わらない。

作業指示の作成。
 教員用画面でビデオの必要な箇所へ指示を書き込める。
 書き取りを行うのか、会話の返事を促すのか、わかりやすく表記できる。
 指示画面は独立したテキストのファイルとして保存される。
 編集や再利用が容易だ。

Web素材の活用。
 ネットワークで接続できるWebサーバーのコンテンツも利用できる。
 ビデオの任意の場所で参考になるホームページを表示できる。
 もちろん作業指示をWebで作成しておく事も可能だ。
 
生徒の作業記録の自動保存。
 実習を行った生徒の記録は、コンテンツごとに記録される。
 同じ生徒が同じコンテンツに何度アクセスしても時系列で記録される。
 保存先は生徒の端末パソコンではなく、指定した保管場所になる。

任意の生徒の実習記録を閲覧する。
 教師用画面から、コンテンツごとに保存される生徒の実習記録を指定。
 いつでも自由に閲覧可能だ。
 書き取りの結果や、答えた音声などを再生できる。

 


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