「ビデオをデザインするツール DPS Velocity*試用レポート」

DPS Velocity*

Copyright copy 1999. Four Two Two Company.Yasuo Onoe All rights reserved.

 

2000-02-20

FourTwoTwoCompany

有限会社フォーツーツー http://www.ftt.co.jp

尾上 泰夫<onoe@ftt.co.jp>

 

 

 


DPS と言えばCGクリエーターの強力な道具を提供するメーカーとして有名だ。

非圧縮D1ディスクレコーダとして最高のコストパフォーマンスを誇った「Hollywood」が「Reality」(リアリティー)スタジオ・デジタル・ディスクレコーダ(SDDR)へ進化した。

CGのビデオ書き出しに定番とも言えるディスクレコーダーに加え、ビデオ編集に必要な全ての機能をワンパッケージ化したのが、「Velocity*」(ベロシティー)というコストパフォーマンスに優れたノンリニアソリューションだ。

シンプルで高機能なdpsRealityボードと(下)V3DXDエフェクトボード(上)

速さを意味するベロシティーという名称をつけるだけあって、すばらしいレスポンスと操作性のビデオ編集環境だ。それでは日本向けの味付けを加えた「Velocity*-J」が変えるノンリニアビデオの世界をレポートしよう。

今回の目玉はV3DXDエフェクトボードを取り付けたことによる効用だ。

これはビデオ編集に大きな効果が発生する。

はじめに「Velocity*」のシステム構成を見てみよう。

今回の試用にはFTTよりターンキーで発売する予定の422V-Stationでのレポートになる。

編集環境を快適にするために機器をラックマウントする思想がコンセプトだ。

冷却に優れたラックマウントタイプの構造に加えて、高性能のキャプチャーボードから発生する熱を直接ファンで逃がす仕組みになっている。熱暴走を予防する必須アイテムだ。

内蔵する強制空冷のファン

Velocity*-Jのプロバージョンにはラックマウントに便利なブレイクアウトボックスが用意されているので、ビデオ関係の配線が容易に行なうことが出来る。

すべての端子が正面から取り出せるので大変便利だ。DVIEEE1394)の入出力、AES/EBUS/PDIFといったデジタルオーディオ入出力、専用統合ブレークアウトボックス、3次元エフェクトボードによるカスタマイズ可能な200種類以上のリアルタイム・3次元 DVE機能、リアルタイム クロマキー合成が標準で装備されている。従来オプション扱いだったRS422アダプタもProには含まれてくるのがありがたい。オプションではSDIインターフェースも追加できる。

DPS純正ブレイクアウトボックス

VTR制御には専用のRS422変換アダプターを介してシリアルポートと接続することになる。注目すべきポイントは、スレーブ制御も可能になることだ。

従来ならノンリニア編集システムがビデオ機器をコントロールするマスターとしてのみ機能するものだが、「Velocity*-J Reality-J」という非圧縮D1が可能なデジタルハードディスクレコーダーをエンジンとし、映像編集ソフトウェアを中心に統合されたビデオ編集者向けのパッケージ製品だ。つまり、ビデオ機器側からコンピュータ内の映像をコントロールしてオンライン編集することも可能なのだ。

専用RS422変換アダプター

もうひとつお勧めのアイテムがタブレットだ。Velocity*は、ペンを使用した操作が快適なインターフェースを持っているのだ。多くの操作が映像の映し出された部分をドラッグすることで行うことが出来るのだ。マウスを利用するより、大き目のタブレットでペンを操作したほうが感覚的にはしっくりくるような作りだ。右手にペン、左手でキーボードのショートカットを押すやり方が流行りそうだ。画面操作には右クリックを重視したメニュー選択が多いので、ペンのボタンに忘れず右クリックをアサインしておこう。

タブレットでペンを使用するインターフェースが快適

システムをインストールしたら、ハードウェアの状況を確認しよう。

Velocity*のバージョンも、まだ頻繁に更新されるが、ベースになるRealityのバージョンアップも盛んに行なわれている。このインフォメーション画面からドライバーの更新を行なうことが出来るようになる。

試用したシステムのバージョン

次にビデオシステムの標準設定を行なう。Genlockがハウスシンクで利用できるならこの画面で外部同期にロックするはずだ。細かにHフェーズやサブキャリを合わせ込むことも出来る。重要なのはIREのチェックだ。デフォルトでONになっている「add 7.5 IRE Setup」を必ずはずしておくように。

ちなみにVideo1Video2の利用は、NTSCモニターを2台並べて利用すると便利だ。

編集素材のインポイントと、アウトポイントを、同時にそれぞれのモニターで確認しながら編集が出来るのだ。

システムの標準設定

DPS社の得意(特異?)な技術にメディアディスクの管理方法がある。「VTFS」バーチャルテープファイルシステムと呼ばれるものだ。キャプチャーボードに直接SCSIインターフェースを持ち、独自の方式でディスクの中のファイルを管理している。

そのために、利用するハードディスクは、ここであらかじめ認識させ、フォーマットしておく必要がある。

SCSI HDの設定

バンドルソフトも充実している。

映像にインパクトのある合成を行なうのは、付属ソフトウェア「DIGITAL FUSION DFX」だ。エフェクトや合成をブロックに配置して、線で結ぶ画期的なインターフェイスが斬新だ。

一連の流れ(フロー)を作成して、素材となる映像に微妙な調整から演出効果を加えていく。今までのようにツリー状のレイヤー階層の不便さに悩むこともなく、合成も素材同士を繋げるだけの簡単さだ。

DIGITAL FUSION DFX合成、特殊効果ソフト

オーディオの細かな波形編集に便利な「Sound Forge XP」も付属して、効果的な音作りも出来るようになった。しかし、このソフトだけは別のコンピュータにインストールしたほうが利用しやすいだろう。音の再生環境がDPSシステムからはできないので、パソコン独自のサウンドボードを利用する事になるからだ。完成したwavファイルを利用してVelocity*のオーディオトラックへ引き込むことは簡単に出来る。

Sound Forge XP 音響編集ソフト

Velocity*-J は「Reality-J」という非圧縮D1が可能なデジタルハードディスクレコーダーをエンジンとし、ITU-R601ベース(YUV4:2:2:4720X486ピクセル)の本格的な放送品質リアルタイム・ノンリニア映像編集を実現している。この高品質を支える「VTFS」(バーチャルテープファイルシステム)の仕組みを簡単に見ておこう。

DPS専用ボリュームと参照静止画フォーマットのディレクトリ

VTFS」でキャプチャした映像は、専用の映像用メディアドライブの中にある「DPS」ディレクトリ以下へ保存される。するとその映像を各種形式のシーケンシャルファイル(連番のついた静止画)として直ちに参照することができるのだ。

VTFS」の構造

しかも、そのシーケンシャルファイルはDPS専用ムービーファイルを参照するだけなのでファイル容量はまったく発生していない。つまり、バーチャルにシーケンシャルファイルを参照できる上に、静止画上で加工編集も可能なのだ。

この機能によってCGレンダリングされた映像をすばやくNTSCビデオ環境で確認したり、キャプチャしたビデオクリップをCGソフトで利用する際に面倒なコンバート作業から開放される。

さて、「Velocity*-J」を起動してみよう。

わかりやすいインターフェースの基本画面だが、顕著な違いは、その操作感にある。

ここで、「Velocity*-J」の基本設定を見ておこう。

この画面では先のRealityで設定した内容の確認を行う。

Velocity*-Jの基本設定

Velocity*-J」では圧縮を利用した場合、2DDVE(約200種類)、カラーコレクション、日本語を含むタイトルのロール・クロール、スローモーションなど編集に関して通常必要とされる機能はほとんどすべてリアルタイムで処理され、効率的な編集作業をおこなうことができる。もちろん各種エフェクトはカスタマイズが可能だ。

簡単にビデオキャプチャするには「QuickCaptuer」が便利だが、ここはテープ記録を保存することを重視して「BatchCapture」を選択しよう。

QuickCaptuerの基本画面

さらに、以前に制作した作品のEDLを読みこんで、テープからキャプチャーを実行することも可能だ。マシンコントロールもキビキビして気持がよい反応だ。

キーボードでのショートカットも、直感的にわかりやすく、使いやすい。

片手だけでも操作が可能だ。

EDLを取込むことが出来る

信号管理も見やすいDPS Quality Control Centerで的確に

ビデオをキャプチャーするときに波形チェックが出来るのは親切だ。

必要であればカラーコレクションを行って取込むことが出来る。

ビデオの波形モニター

ギャラリーウィンドウにはキャプチャされたビデオクリップが並ぶ。

複数開いて整理することも容易だ。

ギャラリーウィンドウ

ここでアイコンをクリックするとクリップを即座に再生してくれる。

ダブルクリックでトリムウィンドウが開く。

トリムウィンドウ

大きな画面がタイムラインのプレビューで、左の二つの画面がクリップのイン点とアウト点を標示している。ここの映像は外部の2モニターに両方とも標示される。

特徴はその操作感だ。

画面をペンで横になぞるだけでJOGの操作が出来るのだ。

しかも軽い感覚でビデオが動くのだ。手で動画をつまんでいくような、一度味わってほしい感覚だ。

イン点の画面をなぞってアウト点の画面をなぞるだけでクリップの設定は終わる。

あとは下に並ぶインサート、オーバーレイ、クロスディゾルブなどの編集方法をクリックして選ぶだけでタイムラインに並んでくれる。

タイムラインウィンドウ

並んだクリップの中で、重なる部分にはデフォルトでクロスディゾルブが設定されている。

オーディオも、のり代に合わせてクロスフェードしてくれる。

もちろん手作業で設定することも、変更することも容易にできる。

オーディオは自動でクロスフェードする

画像の再生が軽いと言うことが、オーディオのスクラブも軽くこなせる環境になる。

従来のシステムができるというレベルを、はるかに軽い感触で操作できることになるのだ。

特殊効果の選択

デフォルトでディゾルブにセットされた効果を変更することも簡単にできる。

すべての効果をクリックするだけでNTSCモニター上にプレビューできるので最適な効果を選択できる。

デゾルブもキーフレーム調整できる

ごく普通のディゾルブでさえもキーフレームを用いて適切なのり移り方を細かに設定することもできるのは在り難い。

3次元の特殊効果

ビデオ編集で在り難いのは、3次元の特殊効果もリアルタイムでこなせる力であろう。

スロー再生などの画像を滑らかにしたりすることにも、この3Dボードは活躍している。

プリセットされた効果に自分の設定を自由に反映できるのは、演出的にも在り難いことだ。

3次元効果のパラメータ設定

3次元変化の軸設定から、時間軸のキーフレームによる変化のコントロールも思いのままで設定できる。

ページカール等の効果パラメータ設定

基本と成る変化の動作でパラメータ設定の必要な個所だけを制御できるので、煩雑になりがちなDVE(デジタルビデオエフェクト)設定をわかりやすいものにしてくれている。

タイムライン上のビデオクリップの特殊効果

DDVEが効果を発揮するのはA,B間の、のり移り以外にも、タイムライン上の

ビデオクリップ自身に変化を加えることでも行うことが出来る。

リアルタイム処理可能なフィルター効果

リアルタイムで行える処理と、レンダリングが必要になる処理が、わかりやすく分類されているので、迷わずに作業内容を検討できる。

クロマキー効果のパラメータ設定

標準的に使用されるクロマキー合成などの素材を利用した合成などもリアルタイムで行う事が可能だ。

シャドー効果の設定

すべてのクリップオブジェクトに影をつけることができる。もちろんキーフレームで位置を時間軸で変えていくことが出来るので、光源移動の効果や、立体の遠近感を演出することも可能だ。

グラデーションの設定

グラデーションの設定を行う時にも便利な手順を親切に案内してくれる。

カレイドスコープ効果の設定

リアルタイムで生成は出来ないが、レンダリングを行えば万華鏡のような効果も実現できる。これ以降はレンダリングが必要な効果だ。

レンズリフレクション効果の設定

光源の輝きと、レンズのフレアを効果的に作り出してくれる。

ライトニング設定

稲妻や稲光を演出することが出来る。

マルチプリズム効果の設定

画面上のオブジェクトを複数に重なり合わせる効果を作りだす。

レペション3Dの設定

ひとつのオブジェクトを複数行列させて、カメラ位置を立体的に設定することができる。

シェーディング効果の設定

平面のオブジェクトに厚みを加えて、光源の設置をすることが出来る。

スターハイライト効果の設定

星の輝きのような光を設定できる。

ブラー効果の設定

おなじみのブラー効果もかけられる。

ウェイブ効果の設定

画面を波打たせる効果をかけられる。

日本語対応キャラクタジェネレータInscriberCG

日本語に対応したキャラクタジェネレータ「InscriberCG」がバンドルされている。もちろんレンダリング不要のリアルタイム標示だ。高機能なバージョンである「モーションエフェクト」の利用も出来るので多彩なテロップ表現が可能だ。

フィットクリップの設定

在り難い機能で、ロールやクロールの文字を流すスピードや時間がフレーム単位で設定できる。これは3Dオプションカードを利用してリアルタイムに補正されるので、動きもスムーズだ。

プリントテープの設定

編集を完成したら納品用のテープへインサート、またはアッセンブルで書出すことになる。

この際にカラーバーの秒数や黒味の必要な秒数を設定できる。

CG制作プロダクションの定番であったDPS社製品は高品質の非圧縮映像を扱うディスクレーコーダーであることだけでなく、番組制作の編集作業に大きな一石を投じた。

169のレターボックスサイズでの編集も可能なノンリニア編集システムが激戦区の価格帯へ下りてきたのだ。

番組制作プロダクションが、ポストプロに通うことより、「Velocity*-J」を導入して完パケまで社内制作を選ぶ可能性が、確実に大きくなったと言えよう。

今回使用した器材に興味のある方はhttp://www.fttco.jpをご参照ください。

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