ストリーミング・エンコーダ・アプライアンス
Digital Rapids社「StreamZ」

 

2002-08-02

Copyright. All rights reserved.

尾上泰夫

 

■Digital Rapids社「StreamZ」
今回紹介するエンコーダー「StreamZ」は、高画質を追求するための、エンコード前のプリ・プロセスを最大の目標にした製品だ。
開発元であるDigital Rapids社は、カナダのオンタリオ州に本社を置く、ベンチャー企業だ。技術スタッフは15年間にわたり放送機器関連の設計デザインの経験を持つプロフェッショナルビデオのスペシャリストだ。
1Uの筺体に収められたパッケージは、専用チップによるハードウェア・プリ・プロセスをリアルタイムに処理する事が可能だ。

■プリ・プロセスとは
NTSC映像の特徴であるインターレース処理を、コンピュータで綺麗に見せるための処理として、動き補償型インターレース除去機能(デ・インターデース)、
3次元ノイズリダクション、インバース・テレシネ、ガンマ補正、などが強力に行える。オーディオの部分はダイナミック・レンジ・コンプレッション、7バンド・パラメトリック・イコライザ等が20bit内部処理で行われる。

動き補償型インターレース除去機能(デ・インターデース)、は、他社にない先進の機能で、エンコードする素材がNTSCの場合、それをそのままキャプチャーすると、フィールドのぎざぎざ感が出てしまう。
Windows Media 付属のエンコーダーや、RealNetworksのエンコーダーソフトにも必ずデ・インターレースという項目はあるが、特に動きの激しい場合に追従しきれなくなり、輪郭がダブル現象が起こる。
StreamZでは、この空間補正を専用チップで強力に行うことができる。

3次元ノイズリダクションでは、ガラスの水槽の中の魚などの映像で、使用すると、水中の透明感や、魚の色艶が映えてくる。
ハードウェア処理になるので、エンコード処理中でも、すべてリアルタイムに反映され、質感の具合を確認できる。

■対応ファイルフォーマット
現在はWindowsMedia 8とReal8、MPEG-1、2(PS)、QuickTime、QuickTime Sorensonに対応しているが、今後はMPEG-4(ISO)、CORONA、Real9に対応予定である。
入力信号だけでなく、一度取り込んだファイルのトランスコードも可能なので、素材の品質管理に大きな可能性を広げるものだ。

■入力フォーマット
入力信号はコンポジット、Y/C、コンポーネント、SDIが各2系統と、DVが1系統も可能になる最上位デジタルモデルと、各1系統入力のアナログモデルまで製品のバリエーションがある。
入力のプロファイルを作成後、エンコーダーの画面でソースの確認が行える。
同時にプリ・プロセスとしてブライトネス、サチュレーション、ヒュー、カラーゲイン、カラーバランスなどが調整出来、リアルタイムに確認もできる。

■エンコード
プリ・プロセスをハードウェアが行っているので、CPUに負荷がかからない上、さらに専用のカスタムチップを2枚搭載してるので、2系統の異なる映像を同時に、それぞれのパラメータで調整したものをエンコードすることができる。

■テスト事例
8月4日、横浜市青葉区の緑山スタジオシティ(TBS緑山スタジオ)で日本オフロードショートトラック連盟(JOSF)主催のJapan Open Nightレースが開催された。
その現場で実際に、1ストリームをレースごとのVODに、もう1ストリームをライブで試合中流しつづけるという、同時作成テストを行った。


実際に運用された株式会社東通の技術開発事業部デジタルコンテンツ開発部の岩田氏から、
「いままで比較したエンコーダの中ではDRCが一番きれいであったし、プリ・プロセスに重点を置いた設計で、将来性を感じる」
とのコメントをいただいた。
当日は気温も高く、中継車の外部テントの環境も苛酷であったが、問題なく作動していたこともお伝えしておきたい。
今後、エンコーダーは中継車の常設機器となる先駆けとして活躍に期待したい。


戻る|次へ