InterBEE 2002

普及、安定期に入ったHDソリューション



尾上泰夫


ハイビジョンからHDへ、日本の放送は転換を行ってから3年以上になる。
HD方式も1080iや720Pなど、放送向けやCM、デジタルシネマ制作向けなどをターゲットに明確な絞込みが感じられる。安定運用期に向かって進みだしたHDシステムを見てみよう。


放送機器としてはあたりまえになったHD機器の中で、各社の特徴的な機能と、応用されるシステム構成を筆者の独断で組み立ててみたい。

☆ カメラ
撮影では、フレームレートを4fps〜60fpsに可変できるVaricamことデジタルシネマ用カメラAJ-HDC27F(Panasonic)がなんといっても面白い。720Pのプログレッシブ画像を生かした高速度撮影やスロー撮影の生み出す映像はクリエーターの夢をそそる。

☆ ディスクレコーダ
特殊撮影の素材をダイナミックに再生するためには、収録時からディスクレコーダへの記録も現場によっては応用がしやすい。ここでは長年のベストセラー機、X-postHD(新輝)をチョイスしてみたい。フレキシブルな操作性と、ネットワーク対応のコントロール機能が運用を助けてくれる。

☆ ポータブルダウンコンバータ
通常撮影の素材はポータブル環境(ノートブックなどでユビキタス制作)でオフライン編集を行いたいものだ。そのために必要になるのがHD信号からDV信号への変換だ。しかもタイムコードが同期しないと意味が無い。ここではDVC-800(Miranda)のカメラアダプタHDダウンコンバータが最適。ここからダイレクトにDVのディスクレコーダへ、HD撮影しながら変換DV記録すれば、撮影収録と同時にその場でDV編集が可能だ。

☆ ノンリニアHD編集
10bitでHD編集をパソコンで行うことも夢ではなくなった。中でも安価に実現できるのがApple MacintoshにKONA HDを搭載したシステムだ。FinalCutPro3という使い慣れたソフト、しかも同じソフトでオフライン編集可能なので、当然オフラインデータはプロジェクトファイルごと利用できる。

☆ ストレージ
ハイビジョンのデータはとにかくハードディスク容量が必要だ。そのためにAppleは大容量、安価なRaidストレージを参考出品していた。編集システムとはファイバーチャネルで接続している。

☆ HDプレーヤー
出来上がったHD作品も再生環境に敷居が高くては利用しにくい。参考出品のJ-H1(SONY)は、小型のHDCAMコンパクトプレーヤーだ。安価なだけでなく、なにより便利なポイントはXGAの出力端子を標準搭載しているところだ。つまり、身の回りにあるパソコンのモニターをHDCAMのディスプレーに利用できるのだ。当然企業のプレゼンテーションで使用されるプロジェクターにも悩まずに接続できる。

☆ HDネットワーク配信
今年の夏にオープンした東京駅前の新丸ビル。お洒落なランドマークとして話題を呼んでいるが、その中で大型のプラズマディスプレーにHD信号を送っているのが HD over IP のソリューションだ。HDビデオサーバーVSR2000A(SONY)と、MPEG-2エンコーダーBDX2300(SONY)を組み合わせ、サーバとしてMGW3100(Optibase)のIPネットワークゲートウェイから、光ファイバーネットワークの中を23Mbpsで新開発のセットトップボックスBNT-100D(SONY)へ繋いでいる。ここからD端子でプラズマディスプレイに大型HD映像を上映しているのだ。

☆ フィルムオリジネーテッドレストレーション
折角HDの高画質、再生環境が整ってきているのだから、昔のフィルム映像を復活させたいものだ。フィルムも寿命があるもの。早めにデジタルアーカイブへ移行したいが、問題になるのがフィルムの傷などのノイズ、退色などの品質劣化だ。RESTOR(de vinci by Techno House)はフィルム特有のノイズをなんと自動的に除去してオリジナルに近い品質のデジタルデータを生成することができる。Octane2R100000(SGI)上で動作するソフトだが、最大24CPUまでレンダーノードを追加することで、作業の高速化がはかれる。


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