ワイヤレス・ストリーミング・カムコーダー
ストリームコーダーVictor GY-DV300 ネットワークパックKA-DV300

 

2002-10-31

尾上泰夫

DVカメラに装着できるエンコーダーがある。ネットワークパックKA-DV300は、DVカメラGY-DV300の底にフィットする設計で、DV記録と同時にWindowsMediaでも記録、配信が可能になっている。内部にはLinux搭載のワンボードコンピュータがコンパクトに収まっているのだ。


PCカードスロットにワイヤレスLANのカードを装着すれば、カメラがネットワークに接続可能になるので、遠隔からの操作や、カメラ画像の確認が行える。


ネットワークパックには「Streamproducer」というソフトがカメラ4台の映像を切り替えながら、同時に10セッションの接続ができるサーバー機能を持っている。


組み合わせは多彩だが、ネットワークに接続するための多少知識が必要になる。
その気になれば地球の裏側からでもカメラを操作できるのだ。世界中に配置したカメラの映像を独り占めするのも夢ではない。


今回の環境を説明しよう。
せっかく切り替えができるので、2台のカメラGY-DV300に、ネットワークパックKA-DV300を装着し、ワイヤレスLANカードをセットする。


ワイヤレスLANのアクセスポイントからLANにゲート接続し、有線でStreamproducerをインストールしたパソコンと接続する。このパソコンをサーバーとして、複数のパソコンから接続して映像を楽しんでみる。
設定の方法を見てみよう。
はじめにカメラへセットされたネットワークパックへIPアドレスをセットする。
カメラのMENUボタンを押してメニュー画面が写ったら、SELECTダイヤルを回し、NETWORK PACK CONFIG項目にカーソルを合わせ、SELECTダイヤルを押す。
この要領でIPアドレス、マスク、ゲートウェイを設定する。次に接続を許可するユーザーIDと、パスワードを設定しておく。エンコードなどの設定はネットワーク経由でパソコンから行ったほうが簡単だ。


2台のカメラで異なるアドレスをセットしたら、Streamproducerから、それぞれ呼び出してみよう。先に設定したIPアドレスに対してIDとパスワードを送ると簡単に接続する。


カメラに対してはWebブラウザーからも設定の変更を行うことができる。
Streamproducerから設定ボタンを押すことでも呼び出せるし、Webブラウザー単独でも、カメラにセットしたIPアドレスで、IDとパスワードを要求され、送ると簡単に接続する。
Webブラウザーからの設定を見てみよう。
カメラ設定では、オート、マニュアルの切り替え、カラーバー出力、ホワイトバランス、アイリス、ゲイン、シャッター、ズームなどのコントロールが可能だ。


エンコーダーとしては、エンコードサイズ、ビデオ転送レート、オーディオ転送レート、フレームレートなどを数段階切り替えられる。だが、この選択肢も少なすぎるように感じる。


限られたスペースのエンコーダーで、必然的にパワーも制限されているためかLANで期待するほどの画面が得られない可能性がある。さらに、日進月歩のストリーム環境で、バージョンアップは期待できるのだろうか。本来はDVネイティブの信号をダイレクトに転送する機能までバリエーションの中にあってよいプロダクトに感じる。
ストリームデータとして記録すると同時にテープもスタートするシンクロ機能もあり、バックアップも安心だ。ストリームデータは、カメラ内蔵のメモリーのほか、Streamproducer側のパソコンでも保存が可能だ。
Web画面からもカメラの画像をプレビューできるが、このときはStreamproducerをクローズしておかないと二重接続になるため接続できない。これは不親切だ。


せっかくStreamproducerにサーバー機能があるのだから、起動している場合は参照先を選べるようにするべきだ。


そのほか、VTR部分の操作もWeb画面から可能だが、タイムコードでのキューアップはできない。また、カメラ側のスイッチでCAMとVTRを切り替えておかないと利用できない。それぞれが、まったく違った用途を想定して付けた機能のようで、一貫した操作ストーリーのデザインを感じられない。せっかく遠隔で記録した映像も、確認するためにはカメラ側で操作する人が必要になる。これでは遠隔操作で無人化できない。
高所に取り付けたり、ラジコン操作の飛行船に乗せたり、さまざまなシーンで利用できる機能だが、操作できる範囲が限定されすぎている。思い切って、カメラスイッチ以上の操作をネットワークでは出来るようにしてほしかった。(操作画面も自由に大きく出来るのだから)


さて、Streamproducerではカメラ入力の他にファイルを再生してストリームすることもできる。
単純な操作でストリームを送信できるので、本格的なWindowsMediaサーバーからプルしてビデオジョッキー的に利用するのも面白い。
一見4ソースのスイッチャーの機能を期待するが、ソースを切り替える場合は、一度ストリーム本線から画像が無くなり、再度バッファーをしてからのスタートとなるため、切り替えといった演出はあきらめたほうが良い。ここは「.netServer」が登場したら、その機能を利用して、ぜひ解決してほしいところだ。
映し出される映像は、プレビューとしては十分に役目を果たすものだ。
リモコンのカメラとして期待すると、タイムラグが大きいのでその分を見越した利用が必要だ。
遠隔での監視用途などでは、さらに外部センサーなどのI/Oがほしいところだ。

原稿を入稿間際に飛び込んできた情報で、KA-DV5000という業務用カメラに装着するネットワークパックが発表された。このエンコーダーには更なる改良が行われている。
直接httpでWindowsMediaPlayerから再生可能。
ビデオエンコードレートが最大512kbpsに引き上げ。
画像サイズにSIF(360×240)とQSIF(160×120)を追加
+5Vネットワークカード対応
MPEG4コーデック搭載
Streamproducer配信への低遅延化(18sec⇒2sec)
キャプチャーシーン、シーンファイル機能の搭載
など大きく進歩している。

今回の試用では辛口のコメントが多くなってしまったが、それだけ期待が大きかったことからの落差と考えていただきたい。アイディアはユニークだが、受け入れる作業現場のりサーチを開発者はもっと行ってほしいのだ。機器のご協力をいただいた日本ビクター株式会社様には今後ますますのご発展を期待しています。


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