日本発!世界へ向けてのITベンチャー

K-StreamとICML

2000-11-30

尾上泰夫

 

前回までは世界の最先端を紹介してきたが、今回は日本に目を向けてみよう。

ハイビジョンを指向する大メーカーを除けば、構造不況的な日本の映像制作業界で前向きな話題が乏しい昨今だが、どっこいITベンチャーの勢いは負けていない。

世界に誇れる日本のベンチャーが開発した技術を2件紹介しよう。

一つには映像をネットワークで配信するK-Streamという独自システムだ。株式会社 オフィス ノアはK-Streamを生み出し、携帯電話等の峡帯域での映像配信をMPEG-4ではなし得なかった品質を今日でも可能にしてみせた。

もう一つは映像配信の演出技術の枠を広げるICMLという記述言語だ。

株式会社ロペはICMLを開発し、SMILでは不自由だった表現技術を広げ、世界へ向けて記述言語のスタンダードを捕りに向かっている。

両社の共通している点は若い技術力だ。そして、新しい発想をお蔵にしない果 敢な経営陣と営業力と言えよう。

取材をさせて頂いた両社の技術は世界でもトップクラスのものだ。

まずは資料をもとに最新技術を紹介しよう。

K-Stream

K-Streamとは、カメラなどから取り込んだライブ映像を iモードやJ-Skyweb対応携帯電話向けに変換して静止画および、ライブ動画で配信するサーバーシステムだ。

このサーバーシステムは、パンチル・ズーム、明度自動調整機能は勿論のこと

タイマー録画、ビデオメール、アルバム、テロップなど、多機能なシステムとなっている。

開発元である株式会社 オフィス ノアは、動画圧縮技術をはじめ、ストリーム配信技術などITには欠かせないテクノロジーを独自に開発しておりモバイル向けのテクノロジーとしては、K-JAVA対応ストリーミング技術やIMT-2000へ向けての独自技術を開発している。

10月より、同社が提供している iモードおよび、J-Skywebの公式メニュー内のサイト"FanClubNet"では、12月からの提供となる。 第一弾として、ラルト・アン・シエルの12月6日東京ドームでの コンサートの生中継。

11月より、エフエム東京が、同社の携帯向け公式メニューで開始する"スタジオのライブ映像配信"も、この技術による。

K-Streamは全ての映像フォーマットに対応している。

静止画、動画のフォーマットはJpeg、Gif、Png、MotionJpeg、

MovingGif、MPEG・・・・等多種に渡るが、K-Stream Serverは入力フォーマットを問わない。

同社の端末ユニットは、高画質と高効率を追求した独自圧縮方式を採用している。また、出力フォーマットも全キャリアの全機種に対応している。

つまり画像はサーバによって機種に適合した画像形式と容量 に調整されて配信される。

新発売される機種には、キャリアからの事前情報を基に発売時には対応済みだ。

もちろん通常のPC環境では何の問題もない。

また、同社はDoPaと組合わせた配信端末を使っての映像配信サービスも併せて開始する予定だ。

ICML

ICMLとは”Intermedia Casting Markup Language”の略でメディア(映像、音楽、テキストなど)の枠を超えた配信を目的とした記述言語だ。

ブロードバンド時代は、動画(映像)の高画質化と、スムースな再生が可能になる。この事によりインターネットはテレビと同等それ以上のクオリティを持ち、さらにインタラクティブ(双方向)性をいかんなく発揮出来るメディアに生まれ変わることを意味する。

そこで時代が求めるものは、現代の記述言語HTMLを超える、動画再生を軸とした新しい記述言語(ML=マークアップ・ランゲージ)だ。

ICMLは、まさに時代のニーズを先取りした革新的記述言語で、ブロードバンド時代のでファクトスタンダードを目指している。

ICMLの特徴

マルチシンクロ

動画(映像)コンテンツとシンクロ(同期)をとりながら、他の複数のコンテンツ表示を可能。

ドラマの再生にあわせ、そこに登場する小道具の詳細情報を表示し、それを効果 的なEコマ−スとして実現する、など多様な用途が考えられる。

マルチレイアウト

配信サイド・受信サイドともに、どうが再生フレームを含む全てのフレームのレイアウトを自由に選択する事ができる。

配信サイドは、より効果的なレイアウトをストレスなく制作でき、またユーザーは自分の好みに合ったレイアウトを楽しむ事が出来る。

マルチシナリオ

メインの動画コンテンツに対して、複数のサブコンテンツ(シナリオ)を用意し、シンクロさせる事ができる。

ユーザーは用意されている複数のシナリオから好みのものを選択し、楽しむ事ができる。

映画の字幕選択(英・仏・独・・・)はもとより、メインでのコンサート模様の再生中に自分のお気に入りの人物にスポットを当てた情報・映像をサブ画面 で表示出来る。

すでに運用可能な状態でデモを拝見したが、共に日本のインフラのグレードアップを待って真価を発揮することになろう。

2001年はネットワークストリームの大きな変化を迎える。

新しいメディアには新しい制作、演出手法があるのだ。

従来の放送局主導の映像買い上げ(権利買取)ではないビジネスモデルの策定が急がれている。得に分岐映像の演出分野は多くの若いディレクターに新境地を与えてくれる事だろう。そんな時代だからこそ物創りの権利を守る手法が真剣に考えられなくてはならないのだ。

コンテンツが不足しているのではなく、生み出すための環境整備が不足している事実を噛み締めるべきなのだ。

最後に、忙しい中、気持ち良く取材に応じていただいた株式会社 オフィス ノア様、株式会社ロペ様に誌面を借りて御礼申し上げます。


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