新しい携帯電話の映像サービス
KDDIの第3世代「CDMA 1X WIN」

 


尾上泰夫

最近、テレビでコマーシャルを流している携帯電話の映像サービスが11月28日から全国でサービス開始となる。
コマーシャルでは、携帯でテレビが見られるような宣伝をしていたようだ。
どのようなサービスなのだろうか。KDDIのソリューション事業本部竹ノ内さんにお話をうかがった。

KDDIが「CDMA 1X WIN」というブランドでサービスを展開するプラットフォームは、従来のCDMA2000 1X、cdmaOne方式との互換性により、いきなり全国で高速の通信(最大2.4Mbps)を利用した映像、音声のコンテンツ配信ビジネスが可能になる。現在は携帯電話2機種(日立、京セラ)とPCカード(京セラ)での対応となる。

大きな特徴は次のとおりだ。

EZチャンネルというプッシュ型の配信。
EZムービーではライブカメラ映像配信可能。
さらに1.5Mbyteに拡張されたダウンロード型。
MPEG-4ムービーメールの互換性向上。
EZフラットという通信料金月額4200円の定額制を導入。
SMILプレーヤー採用によるマルチメディアコンテンツ再生
アプリケーションプラットフォームにBrew採用
GPSの時計を利用した正確な時間サービス

中でもEZチャンネルというプッシュ型の配信は、KDDIで編成した番組を3チャンネルで放送する感覚だ。ユーザーはEZweb上にある番組ガイドから番組予約を行うと、デイリー、ウィークリーに更新されるコンテンツが、深夜から早朝に自動的に一斉配信され、翌朝にはオフラインで再生可能だ。最大3Mも配信されたコンテンツは5〜6分、次回の配信があるまでは、いつでも、何度でも再生することができる。
電波の繋がらない環境でも再生可能なので、ちょっとした待ち時間などに好みのコンテンツを楽しむことが可能だ。
サービス開始時には、映画や音楽のエンターテイメント最新情報、クイズ、バラエティなどが雑誌出版社、テレビ局などから提供が予定されている。
だが、重要なのはテレビ番組や映画のPRや、放送のコンテンツの真似では、携帯電話という特性を生かした新しいコンテンツとはならないだろう。個人が所有するプライベート端末に求められる特殊性を生かしたマスではないコンテンツが求められている。
せっかくの事前予約とプッシュ型の特性を生かした機能なのだから、テレビの編成という感覚より、ユーザーのプライベート特性に応じたパーソナルコンテンツジェネレーターのように機能するしかけが必要なのではないだろうか。
そして電子書籍フォーマットにも対応し、新聞ニュースやコミックなどの番組を提供し、今後もチャンネル数を増加していく予定だ。サービス開始時の公式電子書籍フォーマットとして「CompactXMDF Plus」 (シャープ株式会社)、公式コミックビューアとして「Comic Surfing」 (株式会社セルシス) に対応する。

EZムービーではライブカメラ映像配信可能。
各地に設置されたカメラからライブ映像を配信するコンテンツも可能になる、例えば各地の高速道路の渋滞状況や、お天気、観光地情報など、現在の情報がいつでも携帯電話からリアルタイムで見ることができるようになる。サービス開始時の公式ライブカメラとして、「ネットワークカメラ VB-C10」などのVBシリーズ (キヤノン株式会社)、「MPEG-4ネットワークカメラ BROAD STREAM RT」 (株式会社アイ・オー・データ機器) に対応している。

プルタイプでは、従来1.5Mbyteに拡張されたダウンロード型でWebから配信可能だ。このタイプでは2〜3分ほど勝手サイトが利用できる。

MPEG-4ムービーメールの互換性向上で、異機種の携帯電話でも動画のメールがやり取りできるようになっていく。
3gpフォーマット対応、amcフォーマット (CDMA 1Xシリーズ対応) での撮影・再生、フォトメール便による他社への送信もサポート (3gpフォーマット)する。

大きな変化はEZフラットという通信料金月額4200円の定額制を導入。
高速データ通信の実現と、大容量化するコンテンツのネックは、高額になるパケット代金だろう。「CDMA 1X WIN」では、月額4,200円でEメールを含むEZwebサービスが使い放題となる携帯電話初のパケット通信料定額サービス「EZフラット」を導入した。これは歓迎される。

技術的にはSMILプレーヤー採用によるマルチメディアコンテンツ再生も注目される。「EZチャンネル」で提供するコンテンツでは、今回あらたに、ムービー、アニメーション、静止画、サウンド、文字情報を組み合わせた自在な表現が可能となるSMIL (Synchronized Multimedia Integration Language)技術を採用したことにより、コンテンツの表現力が大幅に向上している。
また、「CDMA 1X WIN」では、今後EZチャンネル以外のEZwebコンテンツ (オンデマンド型) においても SMIL対応コンテンツを提供していく予定だ。SMILプレーヤーは、W3Cが提唱するSMIL Basic、およびKDDI拡張に対応。ACCESS社製のSMIL Player「NetFront v3.1 SMIL Player for KDDI」が搭載されている。

アプリケーションプラットフォームにBrew採用
今回の「CDMA 1X WIN」に対応した端末では、携帯電話のOSともいえる「BREW」を搭載した。
「Javaの3倍の速度」を誇るBREWは, Javaのように仮想マシンを利用せずCPUに合わせたAPIでネイティブに動作する。
OSとは言ってもBREWは,携帯のCPUとアプリケーションをつなぐAPI群として存在する。BREWによってハードウェアとのやり取りた標準化されるので、BREW対応のアプリケーションはさまざまなハードウェアでそのまま動作するようになる。BREWは,ソフトウェアサイズも100Kバイト程度。標準的なJavaVMが500K〜700Kバイトなのに比べるとかなり小さい。
快適に動き、しかも軽い環境で、コンテンツの扱いをより賢くできるようになるのだ。

GPSの時計を利用した正確な時間サービスでは、持ち運ぶデバイスとして最も正確な時計となるだろう。この正確な時間を利用したアプリケ―ションとの連動した時系処理が、今後期待される。

パーソナルメディアである携帯電話が、テレビのまねしたコンテンツに終わらない事を期待したい。


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