ブロードバンドシアター「RoofTop」の試み


ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社の発表

 

2003-02-23

尾上泰夫


ブロードバンドコンテンツが、テレビなどの再利用素材だけではつまらない。
こんな思いを感じている方は多いと思う。
2003年3月29日から4月10日まで開催される「RoofTop」とは、そんな思いに、新しい提案を投げかけてくれる。
インターネット関連サービス「So-Net」を展開するソニーコミュニケーションネットワーク株式会社(SCN)では、「ブロードバンドシアター」を、新しい発想と、新しいシステムで展開することになった。その第一弾の演目が「RoofTop」なのだ。
ブロードバンドシアターとは、インターネット上で提供することを前提としたメッセージ性の高いオリジナル作品、Live、イベントをワールドワイドの市場を意識してプロデュースし、実際の劇場(リアルシアター)と、インターネットに高速接続されたユーザーに対して、高品質の演劇映像(バーチャルシアター)を同時配信するものだ。

ライブステージ
ブロードバンドシアターの第1弾になる「RoofTop」は、リアルシアターとして東京銀座のSONYビル8階にある「SOMIDOホール」からスタートする。
主演は舞台やTVで活躍する「山本耕史」と「壌晴彦」、そして「高木りな」が人間ドラマを展開する。「関聡太郎」演出・脚本・原案による劇空間がバーチャルシアターにどのように映るかがたのしみだ。

バーチャルステージのシステム「空間映像メディア」
複数のカメラで撮影されるステージに加えて、変わったカメラがステージ中央に登場する。
舞台撮影の目玉は、ソニーが開発した360度カメラ「フォースビュー」を利用することだろう。
8台のカメラが逆8角錐のミラーを介して撮像し、画像処理を経てシームレスな360度映像をリアルタイムで得ることができる。


プレイステーション2用で発売されたミュージックビジュアルソフトで有名になった全方位カメラなので、ご存知の方も多いだろう。マルチアングルや、インターラクティブなバーチャルリアリティ映像の制作が可能で、放送やスポーツ映像などにも利用され始めている。


視聴者がまるでプレーヤーと同じ空間に参加できるような特殊な演出が可能だ。

選択映像の演出
「RoofTop」専用のビューデザインはコンピュータの中で、RealOnePlayerや、QuickTimePlayerなどの映像再生プレーヤーの画面だけで完結するものだ。
画面の中は、センターのステージと、右側に縦に並ぶサムネールで構成される。
センターステージはサムネールをクリックするだけでズームアニメーションする。
音声は途切れることなくシームレスにマルチカメラの切り替えを行うことができる。


サムネール画像の内容を紹介しよう。

Main Visual(画像内、右側一番上のウィンドウ)
複数のカメラからのベストショットを選別した映像(ディレクターズカット)が入る。

HandtCam1(画像内、右側上から2番目のウィンドウ)
舞台上の出演者をとらえた映像が入る。

HandyCam2(画像内、右側上から3番目のウィンドウ)
舞台上の出演者をとらえた映像が入る。

Wide Visual(画像内、右側上から4番目のウィンドウ)
舞台全体が見渡せる映像が入る。

Fourth View(画像内、右側一番下のウィンドウ)
舞台から観客まで360度すべてが見渡せる帯状の映像が入る。

2回目以降のバーチャルシアターではFourth Viewのコントロールもキーボードから可能にして、舞台上の好きな角度で観劇することができる予定だ。

視聴者がクリックする必要のある操作には「マルチメディアソフト」の感があるが、ライブ感を、いかに伝達できるかが重要な要素となろう。

重要なMPEG-4の機能
一つの動画ウィンドウの中で複数の動画を保持し、ユーザーの選択によってサイズを変えることができるのも、オブジェクトとして情報を管理するMPEG-4ならではの機能だ。
従来では複数の映像を切り替える場合、複数のストリームとしてバラバラに配信され、切り替えるたびにセッションを張りなおすのでタイムラグが生じ、シームレスな切り替えを望むことは困難だった。SMILなどで操作しての限界は演出的には厳しいものがあるかもしれない。
envivio社のMPEG-4ソリューションは、リアルタイムエンコーダーから出力されたMPEG-4を、オーサリングツールでオブジェクト単位に自由な大きさで複数配置することができる。
しかも視聴者の好みのタイミングで、映像の大きさや位置の変更を可能にすることができるのだ。演出手法は手探りの状態だが、面白い時代になったものだ。
視聴者の準備することは、RealOnePlayerや、QuickTimePlayerなどにenvivioTVのプラグイン(無償)をインストールすることだけだ。

カメラごとに使用する「envivioライブ・エンコーダー」では、カメラや、VTRといったビデオソースを、リアルタイムにMPEG-4のファイルとしてネットワークに対してマルチキャスト、ユニキャストで配信することもできる。
実際、2Mbpsのクオリティーで、フルD1の解像度までサポートできるので、DVDのクオリティー程度であれば、リアルタイムでMPEG-4に変換して配信までできる。

インターラクティブな画面をオーサリングする「envivioブロードキャスト・スタジオ」は、高機能MPEG-4オーサリングのツールだ。
ビデオ以外にさまざまな静止画像、テキストとか、アクションをつけたフラッシュ・コンテンツを利用し、インターラクティブMPEG-4が作成できる。

オーサリング情報と、複数カメラストリームを送出する「envivioストリーミングサーバー」は、配信用のサーバーとして、MPEG-4のファイルを格納して、クライアントからの要求に応じて、同時に500ストリームまで配信できるという。
現状、対応OSは、WindowsとLinuxをサポートしている。

ビジネスモデル
全18開演の舞台、120席のリアルシアターでの入場収入¥5,000と、限定100人のオンライン・バーチャルシアター¥1,050から得られる¥705,000×18=¥12,690,000を目指す。
バーチャルシアターのチケットは、So-Netのオンライン販売のみで行う。
成功してほしいものだ。

視聴にはブロードバンド接続でSo-Netと1.5Mの帯域が確保できることが必要になる。
さらに、コンピュータのCPUもペンティアム4で1.7Ghz以上の性能が必要だ。
自分の環境を事前に確認をしておく必要があるだろう。


戻る|次へ