リアルタイムエディティングでライブ中継配信

PINNACLE SYSTEMS STREAM GENIE

2000-10-29

尾上泰夫

今回はイベントをインターネットでライブ中継するケースを考えてみたい。

大規模イベントではテレビ収録用のカメラクルーがスイッチングシステムなどのフィールドプロダクションを行ってきた。そこでのWebCastソースはプログラムアウトを分岐してもらえば良かったわけだ。問題はカメラ収録までを行うWebCastの場合に従来のスイッチング収録ではコストが合わないことが多いからだ。必要な機材も、マルチソースからのスイッチャー、DVE、キャラクタージェネレーター、音声のミキサー、そしてWebCastで必要なフォーマットへのリアルタイムエンコーダーなど、多くの機材を扱うスタッフが要求されていた。

ピナクルシステムズ社が発売するストリームジェニー(STREAM GENIE)は、そんな悩みを解決してくれるライブ中継の救世主だ。

ストリームジェニーは6つのビデオインプットを持つプリスイッチャーとしての機能を持っている。さらに2系統のTBCを搭載しているので、接続機器は外部同期をかけずに、どのインプットからでも容易に3次元DVEを含め、多彩 なエフェクトを加えた2系統プロダクションスイッチャーのような画面効果を演出することが出来る。さらに別 系統のダウンストリームキーヤーと組み合わさったキャラクタージェネレーター機能も発揮できるなど、フィールドプロダクションに求められるわがままを取り揃えた便利な道具だ。

入力ソースのボタン表示も自由に書きかえられるので、状況に合わせた素材映像をわかり易くスイッチする事が出来る。例えば、一つはカメラで、一つはVTRから、そして、DVDプレーヤーとの切り換えもキーボードを使ってショートカットで迅速に切り替えることができる。実際に操作してみよう。

入力映像の素材を選択すると、それが次に表示される対象に選ばれる。

イベントでのタイミングに合わせて画面 の転換を効果的に行う事が出来るのだ。

画面の右上にあるプレビューモニターでプログラムアウトの確認をすることができる。

ソースの切り換えはカットイン、ディゾルブ、フェードイン、デジタルビデオエフェクトが自由自在に操れる。

ピナクルシステムズ社ではオンラインスタジオのスイッチャー、DVEやキャラクタージェネレーターなどの製品で定評のあるメーカーだけに映像信号の扱いには手馴れている。

ストリームジェニーの心臓部であるGENIEボードはDVEエンジンとして歴史の長いシリーズ製品だ。オリジナルのスタジオDVEとして一世を風靡した「GENIE+Plus」のインターフェースを見ても、自由な3次元エフェクトの扱いが伺える。さらにはOEMでAbid、Media100、JVCなど有名どころ各社ノンリニアシステムでオプションの3次元エフェクトエンジンとしてGENIEボードは活躍してきた。

有名なキャラクタージェネレーターであるデコ(DEKO)、の簡易版、タイトル デコがバンドルされているので、エフェクトと組み合わせて綺麗な文字タイトルを生成する事が出来る。

イベント事前に文字素材は入力をしておき、現場では画面 左下のテロップ素材を選択するだけでスーパーインポーズの準備が完了できる。次のエフェクトを事前に用意しておくことで、イベントなどの緊張する現場で確認しながら有効にタイトルをキーイングすることが出来るのだ。

さらに、すでに用意されたグラフィックスを呼び出し、プレゼンテーション用に表示することも出来るので、セミナーなどの中継も高品質に送出、収録が可能だ。

多くの操作を実際にはキーボードだけで行う事が出来るので、迅速な操作が可能だ。

重要なポイントはストリームジェニーは、このパッケージだけで収録現場から直接リアルタイムエンコードしてサーバーへアップロードする事が出来る点だ。内蔵モデムで直接送ることも、ネットワーク経由でルーターを利用してサーバーへ送ることも自由に選べる。

映像システムとエンコーダーがシームレスに接続されているので、現場で設営の手間も大幅に省ける。

WebCastで使用するフォーマットはReal Videoと、Windows Mediaを両方サポートしている。設定画面ではライブ中継用の設定や、リアルタイムにオンデマンドファイルを書出す設定が選べるようになっている。転送レートも細かく設定できるので、社内LANでの利用に高品質な映像を選択することも出来る。

しかも、デュアルCPUのモデルでは、双方のフォーマットを同時にエンコードして、別 々のストリームサーバーへアップロードする事が出来る。これで世界中のインターネットユーザーが閲覧することができるのだ。従来ならフォーマット毎のエンコーダーを別 途用意するのが当たり前だっただけに、この差は大きい。

また、編集済み映像であるプログラムアウトを通 常のNTSCビデオ出力できるので、VTRへそのまま記録したり、既存のビデオ放送システムなどへ流すことも同時に行うことが出来る。外部接続のオーディオミキサーもあり、現場へ回線を準備すれば、すぐにインターネットライブ中継を行える。

ストリームジェニーは、全てがワンボックスにおさまっているので、思いついた時にすぐに持ち運べる便利さがうれしい。その上、可愛いいキャリーケースも標準装備なので、とにかく移動が楽にできるから収録チャンスを逃がさない。

回線が無くとも、ストリームビデオのフォーマットでリアルタイムにエンコードしておけるので、収録後、すぐにサーバーへストリームデータをコピーするだけで、オンデマンドのサービスを実行可能だ。ビデオアーカイブなどのライブラリーでは、このタイプの運用が多いのではないだろうか。

出張イベント収録を小人数ですることが苦にならないパッケージに近づいてきてくれたようだ。

本体価格:\3,690,000_


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