私的素材再利用の拡大


さて、ノンリニアシステムを利用し始めると痛切に感じることがある。
様々な機能のハードを組み合わせて構築する従来の編集システムと違って、コンピュータソフトで多くの機能を実現するノンリニアシステムは開発者のポリシーが明確に反映される。このポリシーが明らかに日本の映像制作の考え方と違うようだ。
デジタルの持つ特長である「マスターと同一のコピー」や、「データベースとしての検索性」、「素材と編集情報の分離」などを最も有効に活用するためには、その素材を何度も利用できる権利を有する制作方法を実行することです。
何度コピーしても品質の落ちないデジタル素材。
時間や距離を隔てても品質の落ちないデジタル作品。
作品を構成する素材を完全に分離した状態で保存できるデジタル作品。
編集情報だけでも再利用可能なデジタル環境。
従来の(EDL)エディットリストの概念を発展させると、演出家の固有の財産ともいえる貴重な情報として管理が可能だ。
その素材の保存場所を的確に探せるデジタル環境。
さまざまなデータを保管するデータベースの利用が制作者の手に残ればこそ次世代の映像作品を生み出す源泉になる。
個々の素材を単独に入れ替えるだけで別個の作品へ展開できるデジタル環境。
迅速な各国対応のベースとしては、音声、文字情報だけの入れ替えを容易にできる。
ターゲットごとの対応にも変更素材を複数準備可能。
作品のバージョンアップを制作者が行えるデジタル環境。
納品から出版への商品化がもたらす権利関係の変化。
現在、日本の映像制作者は、最も自然なはずのことが最も不自然な形態で行われているように思う。「素材は素財」です。制作者は決してこの権利を放棄してはいけない。

 




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