多機能ビデオサーバー「QuickVideo OnDemand Server」の試用
InfoValue社のネットワークビデオ配信ソリューション

2003-04-01

尾上泰夫


ブロードバンドが騒がれる以前から、多くの自治体や企業内ネットワークで利用されているビデオサーバーがある。
InfoValue社の提供する『 QuickVideo 』ストリーミングソフトウェアは、金融情勢ニュース配信大手『 BloombregファイナンシャルTV 』をはじめ数々の大手企業に導入実績のある国際標準規格MPEGの全てに対応した動画配信ソフトウェアだ。
従来からMPEGを利用するオープンシステムのサーバーとして定評のあるソリューションだが、圧縮技術の進歩と、回線大域の拡大がイントラ市場から、ブロードバンド市場へと守備範囲を拡大している。


簡単にラインナップを紹介しよう。

【ビデオ・オンデマンド】QuickVideo OnDemand

【ビデオ・ライブ・マルチキャスト】QuickVideo Multicast

【コンテンツデリバリ】QuickVideo Distributed Cashe

【ビデオアーカイブ管理】QuickVideo Archive with ClipCreator

【ビデオプレイヤー】QuickVideo Embedded Player

ビデオ配信について必要なソリューションがシームレスに用意されている。
この各ソリューションについては順次機会があれば紹介したいと思う。
今回はビデオ記録環境を提供する【ビデオ・オンデマンド】QuickVideo OnDemandを使用してみよう。
再生には【ビデオプレイヤー】QuickVideo Embedded Playerを利用する。

スループット性能はシングルCPUですら950Mbps以上を可能にするので、事実上ギガイーサネットを全開でサポート可能だ。
拡張性でもCDNなどのキャッシュサーバーが用意されているので、大規模な映像配信も可能にするスケーラビリティを提供している。

サーバーソフトのインストールは、インストーラーのダブルクリックで簡単に終了する。
ライセンスは実機に合わせてそのつど発行される。
重要なのはビデオ素材を蓄積するディレクトリをサーバーソフトに設定するのではなく、OSで共有設定をすることで定義していることだ。必要なディレクトリを共有しよう。
ビデオサーバーによっては性能にこだわるばかりに、専用のフォーマットでデバイスを占領してしまうこともあるので、OSで利用できるフォーマットの中でビデオファイルの管理できるオープンな環境は歓迎される。

さっそくMPEG素材を用意しよう。

従来のビデオサーバーの常識では、ストリーミングに使用するMPEG素材としてTS(トランスファー・ストリーム)を必要としてきたが、QuickVideoの便利なところはTSだけでなく、PS(プログラム・ストリーム)の素材も利用できるところだ。
つまり、DVDなどで使用するフォーマットのMPEG2から簡単に素材が準備できるのだ。
QuickVideoの便利さを思い知るのはこれからだ。
なんと、記録として保存してあるDVDを元に、さらにDivXなどで圧縮した素材を利用することもできるのだ。
DivXはフリーで利用できる高品質圧縮コーデック(MPEG-4に近い)としてDVDのリッピングなどで「ダーティー」なイメージが先行しているが、それは利用者の問題で、高機能なコーデックとして評価に値する。
DivXを利用することでネットワーク配信に適切な2〜3Mbpsの帯域で、MPEG-2では5〜7Mbpsでないと不可能だった高品質な映像を利用することが可能になったのだ。

素材が置かれたらクライアントマシンから呼び出してみよう。
再生で利用する【ビデオプレイヤー】QuickVideo Embedded Playerは、文字通りWebブラウザーの中でオブジェクトとして埋め込まれて利用するようになっている。
DivXを使用する場合はクライアントマシンにも、あらかじめDivXコーデックをインストールしておこう。

簡単なhtmlファイルをテキストエディターで加工すれば実験用の呼び出しファイルは完成する。
このあたりはWMVやRealのエンベッドを利用できる方なら簡単に作成できる範囲だ。

サーバーのIPアドレスと、素材を置いてあるディレクトリのパスを加えて呼び出せば、あっけなく映像が表示される。パラメータで最初にフル画面表示にするか、埋め込み表示にするかを事前に決めておくことが出来る。もちろんいつでも好きなときに画面サイズは変えることが出来る。

ここで比較したいのはローカル環境で再生するDVDコンテンツの映像だ。
恐ろしいことにネットワークを介して送られてくる映像が、フルスクリーンでスムースに再生され、ローカルのコンテンツと殆ど差がない点だ。社内や、学内での利用なら十分にビデオ放送の変わりに利用することが出来る。
2Mbpsほどの帯域ならブロードバンドでも可能な世界だ。

実際に台湾の国会中継や、ロッキードマーチン社の米国空軍での利用事例などでも、フルスクリーンでの画質と、オープンシステムが高く評価されての導入と考えられる。

今回の試用は、InfoValue社の提供する『 QuickVideo 』ストリーミングソフトウェアを利用したソリューションとして、弊社(FTT)が開発するメタデータ自動登録システム(i-Topic)の映像部分を大画面で運用するために評価した。(http://www.ftt.co.jp/Topic-i/index.html
同時にWindowsMediaServerと共存させ、PDAなどの手のひらで持ち歩けるワイヤレス・ユビキタス・ソリューションと、LANでのフルスクリーン再生可能なシステムを組み合わせたオープンなシステムが構築でき、拡張性には非常にありがたかった。
特にフレーム単位で動画のアドレスを指定して再生する機能は、プロダクトによってかなり面倒な儀式が必要になるケースがあったり、ファイル単位の呼び出ししか対応できないサーバーもあったりするので、サーバー選択には使用目的を良く考える必要があるだろう。

ビデオサーバーを利用するようになると、配信するビデオコンテンツが少ない場合は、簡単なディレクトリ方式のメニューからでも映像を探し出せる。
しかし増え続けるコンテンツや、内容からの検索を望む場合は、データベースを介して上手に検索できないとまったく機能しない。
データベースを活用できるようにするためには、多くのメタデータを入力しておく必要がある。
このメタデータを入力する手間を大幅に省いたシステムが前序の(i-Topic)である。
多くの映像素材が増え始める兆しがある学校などのシステムに最適なソリューションとして、東京大學にも導入されている。


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