デジタルビデオデータの入れ物
medea VideoRaid RTRを検証する

 

2002-12-26

尾上泰夫

 


■ デジタルビデオデータを利用するためのハードディスク

ビデオの記録をデジタルで管理するとき、D1、D2、SX、Digital-βCAM、DVCAM、DVCPROなどのテープで収録し保管するケースが多いだろう。
完パケでも、テープ保管は、コストパフォーマンスの面でも、現在考えられる最良の方法だろう。近年のアーカイブでのデータ保管ストレージも、価格的にテープの媒体量/単価を下回るまでにいたっていない。しかし、利便性を考えたときには、サーバーは圧倒的に有効だ。
使用頻度をある程度以上見込めるデータはハードディスクに入れたままにしておきたいものだ。
近年の圧縮技術をもってしてもHD編集を意識した素材環境に要求する仕様は厳しい。
大容量になればなるほどバックアップも時間がかかるし、保存と保存のインターバルでの空白期間に、ピンポイントで狙いをつけたようにトラブルは発生するものだ。
基本的に覚悟しておかなくてはいけないことだが、コンピュータ関連機器は、時間の問題で、必ず壊れる。
この壊れたときの被害を最小限にするためのコストが、逆に被害額を上回らないようにするコストバランスが必要なのだ。

●ディスクRaidはドライブの故障からデータを守る。

一方、OSに依存しないで複数のハードディスクを一ボリュームとして認識させるRaid機能を持つ製品は、ハードRaidシステムとして存在する。従来サーバー用途などのマルチユーザーアクセス、ノンストップ利用を前提としたシステムが多く、大容量データ保管、連続大データ転送を要求されるビデオ編集にはセッティングが合わなかったり、ハードRaidは価格が高かったりで、なかなか手が届かなかったのが実際のところだろう。
しかし、データを守るという点では、OSに依存しない独立したプロセッサー(ディスクコントローラ)を有するハードRaidは、単体ディスクは壊れることを前提にした場合、必須とも言えるシステムだ。これは、ディスクをフォーマットしなおしてから、再びビデオテープからのキャプチャを行う手間との価格バランスになってくる。

● 安価な大容量ハードRaidシステム

ノンリニアシステムの初期のころから筆者が気になっていたメーカーがあった。
当時はIDEのRaidでは不安定で、コマ落ちの心配があったので、よほどの圧縮映像に限定した仕様以外は使ってこなかったが、名前からしてビデオ編集に特化したハードRaidの製品を発表してきた「medea」社だ。独特のディスクコントロール手法をもって、IDEの欠点であったOSへのオーバーヘッドを回避し、ハードディスクの内周と外周のスピード差も複数ディスクでバランスする仕組みを提供している。この結果、ビデオ編集に最適な、安定した大容量転送を安価なIDEディスクで可能にしているのだ。実際にVideoRaid RTRはデータ保護性のないハードディスクを筐体に収容しただけのストレージと価格面で競争している。
近年「VideoRaid RTR」を発表し、高性能をアピールし、シングルユニットでAJA, Avid, Digital Voodoo and Pinnacleなどの非圧縮リアルタイムにオフシャル対応。他にもDPSなど多くのノンリニア機器メーカーの認証を獲得している。
さらに2台のRTRをデュアルチャネルSCSIホストアダプタに接続することで1080i HDノンリニア編集システムにも対応している。
新社屋に移るテレビ朝日本社のHDシステムに20セット以上の納入が決まったのも信頼が裏づけされた結果だろう。

●めったにできない実験。動作中のドライブ交換。

従来高価だったRaid3のコントロールを可能にしたVideoRaid RTRを、実施に使用してみた。
もちろん、パフォーマンスでは問題ない。
試しに、ビデオを再生中に任意のディスクを引き抜いてみた。(実際の仕事では怖くて試せない)
理屈ではわかっていても動き続ける姿に感心してしまう
VideoRaid RTRは、データの消失やパフォーマンスの低下も無く、何事もなかったかのように動作しつづける。再度挿入すると、自動的にリビルドが開始する。まったく手間がかからないのだ。
ちなみに、通常のRaid製品は、ドライブ故障時に50%以上も転送速度が低下することが多いので、実際はりビルトが完了しないと作業には使えないことが多い。
導入しやすい安価なシステムには感じられないほど、運用中の安心感は絶大なものがある。
ノンリニア編集で溜まってきた、使い回しの多い貴重なデータに悩んでいる方は、早めに安心を手に入れることをお勧めしたい。
作りこんだデータは、思った以上に貴重なものが多いのだから。


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