映像を表示するデバイス各種コンバータ

FourTwoTwoCompany <http://www.ftt.co.jp>
尾上泰夫 <onoe@ftt.co.jp>

「スキャンコンバータ」
スキャンコンバータは、異なる走査線数で表示されている画面を、変換する為に使用される。
例えばテレビジョン方式の画面と、パソコンの画面というような走査線数や、インターレース、プログレッシブなど方式が違う信号をコンバートする装置だ。
よく使われるのは、パソコンの映像(1024×768など可変)をテレビのモニタ(640×480相当)に映したい、もしくはVTRにそのまま記録したいというような用途に使われるのがスキャンコンバータだ。レートを落とすことになるので、別名ダウンコンバータとも言われている。さらに、パソコンの全走査線を描画するプログレッシブ走査から、奇数、偶数の走査線をフレームの半分の時間になる60分の1秒単位のフィールドで交互に描画するインターレース走査に変換する。
もう少し詳しく動作を考えてみよう。パソコンモニタに使用する映像信号方式と違うテレビジョン方式に変換をするためには、まず画面をスキャンしている走査線数を何らかのかたちで間引いて、つじつまを合わせることになる。ここでは機械内部にあるフレームバッファといわれるメモリに、静止画として格納する。この静止画を元に自由な走査線数や走査方式(プログレッシブかインターレースか)で取り出す事により信号の変換を実現している。
さらに、色表現の中でもテレビジョンの表示限界とパソコンでは違いがある。パソコンの0%から100%までの各色信号の全部は扱えない事になる。放送規格であるCCIR601(簡単には0〜255の値のうち16を0%黒、235を100%白、236〜254までマージンとするような規格)で利用できる幅が決められている。白より明るい白、黒より暗い黒が存在することになるが、人の目の可視範囲で、心地よい色バランスは、必ずしも一様ではなく、敏感な色と、鈍感な色が存在する。特に敏感なのが人の肌色だ。
わずかな色の差を見分ける事ができる。ダイナミックレンジの広い範囲を同じ割合で16〜から〜235までに詰め込むと、この敏感な範囲を狭めてしまう。そこで、中間を残して、上下をより圧縮するような処理を行う事が多い。さらに、カメラの回路でも多く使われるハイライトコンプレッションを見てみよう。100%を超える明るさの中にも自然界には当然色が存在するが、ビデオ信号にはもはや白しか表現の幅がないことになる。家庭用のカメラなどで、人物の背景にある、あかるい青空が真っ白になる現象だ。
そこで、高価なカメラにはハイライトコンプレッション機能が存在する機種がある。これは明るい部分のレンジ100%に行く手前まで圧縮して微妙に色を残す事ができる。黒から立ち上がり、白へ飛ぶまでの幅での感度を調整する仕方がメーカーのポリシーを感じさせる。
同じ機能が高機能コンバータにも存在する。カメラほどダイナミックレンジを意識する必要はないが、16〜235までに0〜255の情報を押し込む時のつぶし方には同様の気配りが必要になる。しかも放送方式ではクロマ(明るさ)とヒュー(色相)を分けて調整できるが、コンピュータ上ではRGBの要素だけで表現されるので、見た目に色の要素では変化が起きる可能性が高い。
必ずどこかでしわがよるわけだが、しわがよったところをいかに綺麗にごまかすかが、このハードウェアメーカーの一番の特徴になるところだ。
同様にHD(High Definition)の信号を、SD(Standard Definition)のノーマルのテレビジョンに映したいというときのダウンコンバータとか、逆の場合のアップコンバータという製品もスキャンレートを変換している。HDの信号も多様な方式が存在するので、1080i(インターレース)や、740P(プログレッシブ)の信号など、用途によって変換が必要になる。

「メディアコンバータ」
メディアコンバータというのは意味の広い言葉なので、多くの専用機器を含んで使われる。
基本的には走査線の問題とか、放送方式ではなく、送る信号そのものが、違った入れ物、つまり同軸ケーブルや光ファイバであったり、イーサネットであったり、無線であったりするなど、異なるメディアを接続するため必要な変換機器だ。
信号が通過する際に利用する入れ物という意味での媒体(メディア)をコンバートするわけだ。
比較的使われるものはDVとアナログのメディアコンバータがポピュラー。
例えば、DVカメラ、もしくはDVのVTRの再生信号、IEEE1394と呼ばれる規格のコネクターでつながれたケーブルで映像、音声信号の送りも受けだけでなく、コントロール信号も送られるわけだが、このコネクターにはビデオのDV信号だけでなく、ハードディスクを接続したり、高速のネットワークケーブルとして利用したりする事もできる。
ケーブルが物理的に同じでも、ソフト的に違う情報として受け取ることができる。
一方、流れる信号の中で、NTSCと呼ばれるテレビジョン信号は、その入れ物自体を変えアナログのビデオ信号として取り出す事を目的とするのがメディアコンバータだ。
DV機器から、安価なものはRCAピンを利用する普通の家庭用のビデオデッキ、モニタで映像、もしくはSのビデオで使用する。
オーディオもRCAピンでステレオのライン出力として利用できる。このようなコンバータは逆方向のコンバートも可能な製品が多いので、アナログビデオをDVのVTRへダビングする際にも利用できる。
映像ケーブルの変換でも多くのパターンがある。最近D1、D2、D3といったデジタルケーブルで高解像度のモニタへ接続するケースも増えてきた。このコネクターを利用してメディアコンバータ経由でアナログビデオを出力することも可能だ。ただし、信号を変換しても画質がソースより向上するわけではないので、ソース映像の品質を高めておくように考えておく必要がある。
変わったものではアナログ映像信号を受け、パケットに載せられるデジタル信号へ変換して、イーサネットケーブルを介し、遠距離へ搬送し、またアナログの映像信号へ戻すような中継システムもメディアコンバートの例と言える。
これは大きく分けると2種類の方法が提案されている。
初めに、テレビ会議のようにリアルタイムの映像を電話回線やインターネットなどを通じて送リ受けするように、同時性を重視して品質は可能な限りで満足する方法。
この方法は回線の帯域を十分に使える場合は画質を維持できるが、帯域が狭くなると画質も悪くなるという関係がある。一方、ビデオFAXと呼ばれる商品は、ある品質の映像を記録すると、その記録データを通信回線で転送し、まったく同じ品質の映像を遠隔地で再生する事ができる。
DVビデオ信号をネットワーク経由で中継するコンバータソフトも存在する。
空中を飛ばしていくマイクロ波無線を利用した放送中継も同様の結果を目的としている。