「デジタル放送のしくみとこれまでの歩み」

FourTwoTwoCompany <http://www.ftt.co.jp>
尾上泰夫 <onoe@ftt.co.jp>

「デジタル化のはじまり」
デジタル技術はさまざまな分野で以前から利用されていたが、放送の分野では、まず1980年代後半から放送機器のデジタル化が始まった。しかし放送の伝送部分のデジタル化は80年代当時の技術ではまだ夢だった。90年にアメリカで、ケーブルテレビの多チャンネル伝送の研究から、HDTV(High Definition Television)でもデジタル伝送できる技術が開発されたのをきっかけにして、放送の前面デジタル化が可能になった。

「アナログからデジタルへ」
デジタル放送はNTSC*の通常放送のアナログの電波が、デジタル化されたところから始まる。アナログである光の量をデジタル化するには、その光の量を電圧の量に変えて送るわけだが、デジタルではある時間ごとに細かく刻んで数値に変え、それをすべて2進数の「0」と「1」で表現し送る。
時間的に連続な変化を示す波形であるアナログ信号をそのまま電波によって伝送する代わりに、そのアナログ信号波形を一定感覚で数値化し、それを2進法で表現したものの一定桁数ごとを電波の状態またはその変化で表す(変調する)ことにより、雑音によるある程度の妨害を避けつつ効率の良い情報伝送を実現することが可能なのである。
アナログ放送の場合、信号が送られてくる途中で、外来電波や電気製品などから発生する妨害電波によって本来の信号が影響を受け、多少の障害を受けることがある。
これに対して、デジタル信号は、「1」か「0」しかないので、もし外からの雑音などの影響で「1」が「0」になったり、「0」が「1」になったりする事もあっても、最終的には、送る手順などから正しい「1」、「0」に訂正して映像や音声を組立てるので、きれいな映像や音声が楽しめるのだ。これが、デジタル放送の代表的な特長であり、魅力だ。

「放送のデジタル化のメリット」
@デジタル放送システムでは、これらの信号処理部を組み合わせることにより、情報伝送中に放送波に付加されてしまう雑音などによって引き起こされる情報の誤りを受信側で除去し、高品質な映像・音声を提供できる。
A多量の情報を圧縮できるので、もっと一度に情報が送れるようになり、多チャンネル化の実現につながる。
B通信やコンピュータと共通の形式の情報(デジタル信号)を取り扱うことで、それらシステムとの融合を図れ、双方向のサービスの実現につながる。
 
「デジタル化の理由」
CSデジタルではPerfecTV!が1996年より始まり、BS放送では民放系5局、NHK、WOWWOW、スターチャンネルが2002年から開始した。BS、CSでデジカル化が進んできた理由は、チャンネル数を増やしたいというのが一番である。また、電波そのものを見る相手を特定したいときに、デジタルはとっても便利なのである。今までは、例えばニュースの放送など、地方でカメラ取材をしてそこの映像を本局に送る場合、衛星に電波で送って、本局で受けるSNG(サテライトニュースギャザレット)と呼ばれるやり方があったが、そのときのニュース素材が昔のアナログの放送の受信機をもっていると、ニュースで放送される前に素材を見る事ができた。そこで、セキュリティの必要な映像を流したい場合の企業ユーザーなどに好都合なため、衛星がデジタル化していったのも理由の一つだ。

「いよいよ本格的なデジタル放送の時代がやってきた」
これは、新たな人が、新たに機械を買って成り立つ通信の方式だから、既存のテレビがアンテナで受信できている状態で、いきなりデジタル化するのはとても大変なことだが、これがいよいよ始まろうとしている。

「コラム」
デジタル放送というかたちで地上波が行われるようになり始めた。そこで気を付けなければならないことは、今までの衛星で行われていたビジネスモデルと地上波のビジネスモデルの違いがありながら、同じ、映像の伝送方式をとることにより起きる問題だ。


「コラム」
米国では1998年11月に地上波デジタル放送が開始し、英国では、1998年にBBCとON Digitalが放送を開始した。
お隣の韓国で2001年10月からSBSが、11月からKBS1,EBSがデジタル放送を開始した。
世界各地で、HDでの迫力映像を楽しめる日は、着実に近づいている。