「地上波放送の歴史」

FourTwoTwoCompany <http://www.ftt.co.jp>
尾上泰夫 <onoe@ftt.co.jp>

1953年2月1日にNHKがテレビ放送を開始した、民放も続く8月28日に日本テレビが放送を開始して以来、テレビは約50年の歴史があることになる。
1989年にBS放送が始まるまでは、放送とは地上にあるテレビ塔から出ている電波を受信するものと決まっていたので、わざわざ「地上波放送」とは言わなかった。
日本のテレビの歴史は、地上波テレビ放送の歴史からの変化形と言える。
それ以外の放送の種類には、衛星放送やケーブルテレビがあるが、ほとんどの家庭が地上波放送を受信している複合受信とも言えるだろう。

「地上波放送のしくみ」
地上波放送とは、電波の中継方法で、アンテナからアンテナへ信号を中継し、映像を送るしくみと言える。送信所から、中継所を経て放送電波が地上を沿って各地の放送局へ、そして各家庭のアンテナへ電波を送り、映像を流す。このしくみが地上波放送の基本になる。
電波を広い地域まで飛ばすために、出来るだけアンテナを高い位置まで上げることが効果的だ。東京では放送のための自立鉄塔として世界最大の東京タワー(333m)が建てられた。そして関東に、放送電波を流す仕事が与えられた。
しかしある一定の距離から離れると電波は減衰する。電波が届きにくい地域(山や谷)が日本には多く、それをカバーするために随所に多くの中継放送局というものが誕生した。放送を途切れないように広範囲の地域へと送る役割を担っているのだ。
しかし、日本の放送業界には、電波の混信を防ぎ、秩序ある運営がなされるように電波の周波数を各放送局に割り当てられた電波法と、電波を使用して情報提供することの社会的責任を勘案して放送の内容や運営方法について放送法がある。地域を限定した免許事業として放送事業者には厳しい制約を義務付けている。
例外として全国放送が認められているのはNHKのみなのだ。

「放送局のネットワーク」
全国放送が許されない民間放送は、中継機能をもつテレビ局を系列局として番組を販売し、ネットワークすることで、同じ内容の放送を違った地域で同時に放送することができるようになっている。
ネットワークの仕組みは、キー局、準キー局、ローカル局の3層構成になっており、実際に東京、大阪のキー局が中心となり番組の制作をしてローカル局が番組販売を受けると言うかたちでネットワークを構築しているケースが多い。
基本的にキー局の番組を同時再放送する地方局だが、ローカルニュースは、地元で制作する体制になっている。しかし、時と場所を選ばない、事件、災害の報道番組制作にかかる制作費を、単独局の負担とならないように、報道番組はネットワーク系列局の拠出される基金でまかなわれるように工夫されている。

「視聴率競争」
営業放送で宣伝広告のスポンサーがつき電波の時間を売って放送すると、他のチャンネルに切り替えてくださいというわけにはいかない。
自分の系列のチャンネルをずっと見てもらえるように、さまざまなジャンルを網羅し、万人に1つのチャンネルを見てもらえるように工夫するのが放送局の番組編成の仕事だ。
一方これが今の地上波放送のチャンネルに差別化を失わせてきた理由の1つでもある。
地上波民放テレビ局の収入のほとんどがスポンサーからの広告収入で成り立っているゆえ、1つのチャンネルで万人をカバーしようとし、同じマーケットで競う。多チャンネル化に向かう現在も、単純に視聴者数の削減による広告収入の低下で、制作費を下げているチキンレースに突入している。
ペイパービューなど受益者負担の放送収入も取り入れて、さまざまに変化をしていく放送ビジネス戦国時代と言える。

「コラム」
東京タワーは、1958年 昭和33年12/23竣工
この塔から関東一円に放送電波を発信している。
テレビ放送17波(地上デジタルテレビ放送8波を含む)
ラジオ放送6波FM放送及び地上デジタル音声放送実用化試験放送。