映像制作ワークフローを考える
ネットワークで分散している素材を管理するデータベース「thiiDa」

2003-05-31
尾上泰夫


コンピュータで映像制作するグループが共通して直面する問題の一つに、膨大な動画素材の共有という要求がある。一般的な事務データならファイルサーバの共有ボリュームに保管して、ネットワークを利用するユーザーが自由にアクセスすることで解決する。だが、非圧縮の映像素材は、キャプチャーをおこなったマシンや、CGをレンダリング出力したマシンに直付けされた膨大なディスクスペースと、高速のアクセスを要求され、をおいそれと移動もままならない。他のマシンからプレビューを簡単に行うことは不可能に近い。
大容量すぎるデータゆえ、ファイルサーバでの共有も行うところは少ない。
システムに予算をかけられるところではファイバーチャネルなどのSAN環境を構築して、はじめから共有を実現している。しかし多くのプロダクションではオーバースペック(金額)の設備になりやすい。
重要なところは、どのマシンに、どのような素材が保管されているかを一括して検索、管理できれば、かなりの無駄が省けるわけだ。

☆アセットマネージメントのためのデータベース管理システム「thiiDa」
今回紹介するのは「株式会社ビジュアル・プロセッシング・ジャパン」(http://www.vpj.co.jp)の提唱する、「thiiDa」(ティーダ)というネットワークにある素材を一括管理するデータベースシステムだ。

動作環境として、サーバ自体はWindows2000/XPでのSQLサーバで作動するが、素材を管理する対象はWindowsのみならず、Apple Macintosh、SGI、Linuxと、CGや映像、画像制作に必要な環境を網羅している。
検索可能な対応フォーマットは以下のとおりだ。

・ iff
・ avi
・ cin
・ pic
・ rgb,sgi
・ rpf
・ tiff,tif
・ als,alias,pix,alsz
・ ct,ct16
・ jpeg,jpg
・ mov
・ rla
・ tga,targa
・ yuv,qtl
・ etc…

ごらんのように、業務利用のCG、画像、動画フォーマットの多くをサポート済みだ。

ティーダの特徴はデータベースへの登録をローカルマシン上で動作する「thiiDaデーモン」と呼ばれる常駐型のソフトが自動的に行ってくれる点だ。Windows、Mac、SGI、Linuxに準備されている。
専用クライアントからはデーモンの作動している各クライアントが保有する最新データを、転送量の軽いプレビュー用プロキシ-画像で確認することができる。
しかも素材の管理状態が把握しやすい階層構造を保持したまま検索が可能だ。

インストールは管理が必要なマシンすべてに「thiiDaデーモン」を導入することから始まる。
監視するディレクトリを指定したら、あとは操作を気にする必要はない。新規にデータが作成されると、デーモンはプロジェクト名、ファイル名、ファイル保存先、ファイルフォーマット、ファイルサイズ、画像の縦横サイズ、色深度、ファイル所有者、ファイル作成日、最終更新日など、検索に必要な情報をデータベースへ自動的に書き込んでくれる。さらに、データ検索用の低解像度データ(プロキシー)も自動的に作成してくれる。これは便利だ。
もちろんレンダリングイメージなどは、画像を修正、保存するたびに最新のものへ更新される。

プロジェクト管理から見てみよう。
ティーダではファイルサーバやクリエータのローカルマシンなど、ネットワーク上のさまざまな場所にあるデータを、そのまま移動せずに場所情報をデータベースで一元管理できる。
ティーダのインターフェースは、わかりやすい画像のサムネールと、ファイル操作のためのエキスプローラでシンプルに構成されている。
プロジェクト名を定義すると仮想的に、さまざまな場所にある素材を一元管理が可能だ。
作業に必要な素材を確認したら、エキスプローラの任意のディレクトリへドラック&ドロップするだけでオリジナルデータの転送を行うことができる。
動画の閲覧、確認もプロキシで低解像度のプレビュー再生が可能だ。

「画像サンプル(C)ARTBEATS」

データ検索、プレビュー
自動的に記録されるファイル作成日や更新の情報や、さまざまなメタデータをキーに高速な検索が行える。一度検索した状態から、さらに絞込検索も可能だ。
重要なポイントは、ティーダは実際のメディアファイルを検索するわけではないので、高速で、ネットワークトラフィックも最小に押さえることが可能だ。

アーカイブ、バックアップ
ティーダはアーカイブに対しても有効だ。通常ではデータをストレージテープなどにアーカイブすると、データはHDDから削除されるため、データのトラッキングは困難を極めるが、ティーダでは、データをアーカイブしてもデータベースに記録や、プロキシー映像は残るので、通常のファイルと同様に検索が可能だ。プロキシーにはオフライン表示がされ、アーカイブテープを特定できるため、そのテープから簡単にレストアさせることができる。戻す先も記録があるため正確に復活させることができるのだ。


さて、さまざまに便利なティーダだが、取って置きのオプションを紹介しよう。
それは「Discreetインターフェース」だ。
映像制作のハイエンドシステムとして重宝されるDiscreet社のInferno/Flame/Smokeなどで採用されているStoneディスクアレイシステムは、従来では一度InfernoのHDDを経由しないと外部から映像データをやりとりできなかった。
これは素材の移動ですら高価なInfernoルームの貴重な時間を無駄にする原因となっている。
しかもHDDからStoneにコピーするのも結構な時間がかかっていた。
そこでティーダのオプションを使うとStoneのディスクへネットワークから直接アクセスすることが可能になる。つまり、映像を直接書き込むことや、連番画像として取り出すことが容易にできるようになるのだ。
目からうろこが落ちるように感じられるかたもいるだろう。

現在は単純なメタデータの検索に限られるが、動画像の中で特徴を検索できるようなインデックス機能を充実していったら、さらに使いやすくなるだろう。今後に期待したい。


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