ストリーミングビデオとDVDの関係?

2000-4-22

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尾上泰夫

 

NAB2000でハイビジョンに力を注ぐ日本企業を尻目に、米国企業は本気でインターネット・ストリーム・ビデオを映像ビジネス・ツールと位 置付けて、さまざまなシステムを発表してきたことが印象に残る。このベースになっているのが米国での高速通 信回線と低価格な利用料金だ。

筆者の知人宅(カリフォルニア)では、3人いるお子さんたちがテレビ放送を見ることは殆どなく、家庭内LANでつながった自分専用のパソコンで、アニメなど好みのインターネット・ストリーム・ビデオを楽しんでいるのだ。

現在、英語圏では多くのテレビ放送番組がネットワークを利用して視聴することが出来る。

また、オンデマンドの番組も多く存在する。

画面は、日本のストリーム・ビデオの小さく、コマ落ちの激しい、汚い映像イメージを想像しがちだが、回線スピードの違いは格段に大きく、滑らかな動きを大画面 で楽しむことを可能にしている。もともと電波での放送よりケーブルテレビ局の番組受信が多い米国では、オンラインで放送を受け取る設備に物理的障害が少ない。しかも、従来でも一般 的なテレビ放送の画面品質は日本のようにやかましくない事情はあるが、パソコンで表示される画面 が綺麗になったおかげで、ストリーム・ビデオと、家庭のテレビで見る放送番組の画質差が想像以上に縮まってきているのだ。

これならテレビ放送は必要ない。

知人宅は家庭に4.5Mの専用線をケーブルモデムで引き込んでいるが、その利用料金もなんと月額$40(約4、000円)なのだ。

日本の専用で4.5Mを契約すると月額100万円を超える。いくらISDNが128Kで固定料金を5、000円にしても、40倍近い、けた違いのスピードが安価に利用できる米国とのインフラは違いすぎるのだ。

インターネット・ストリーム・ビデオはテレビ放送を脅かせるか?

この問いの答えは、日本ではまだしばらく安泰だと考えられる。

日本のインフラが高額なネットワーク料金をむさぼる間、映像ビジネスは鎖国をしている。

この間に映像ビジネスのモデルが世界では大きく変化してくることは必至だ。対応することが困難なほど差が広がっていくことも考えられる。省庁の利権も絡んだ重厚長大な施設ビジネスから、パーソナルなコンテンツビジネスへのパラダイムシフトは、この犯罪に近い通 信料金下では困難だからだ。

しかし、外圧に弱い日本がいつまでも鎖国を続けることも不可能だろう。

今回のNAB2000では、ノンリニア編集システムから、ネットワークへビデオストリームを送出できる機能を発表していたメーカーが2社見うけられた。

Matrox社RT2000と、DPS社Velocityである。

ビデオ編集環境からダイレクトにリアルビデオ形式のストリーム出力を行うことが出来るのだ。もちろん、このままでは複数のユーザが視聴できるマルチキャストではないが、ストリームビデオサーバーへキャストすることで、簡単にマルチキャストの映像データーとして扱うことが出来る。

この機能をどう使うかは、これからの映像制作者(プロダクション)の課題だ。

一方、面白くなったDVDの世界も紹介しよう。

みなさんはcDVD、eDVD、sDVD、をご存知だろうか。これらがDVDコンソーシアムの定めたDVD規格を拡張して、さまざまなコンピュータ映像の世界でMPEG2を利用できるように工夫をしている状況をご説明したいと思う。

cDVD:DVDのディスクイメージをCD-ROMに書きこんだもの。

現在高価なDVD-Rライター(60万円強)をきらって、普及しているCD-Rライターで映像ディスクを作成する。

パソコンのDVD再生ソフトを利用して、高速のCD-ROMならDVDビデオを遜色ない映像で再生することが出来る。

しかし、保存できる容量が650MとDVDの4.7Gに比べて格段に小さく、家庭用のDVD専用プレイヤーでは再生できない。

eDVD:DVDをネットワークコンテンツと連動できるようにしたもの。

DVD画面からリンクする先をインターネット上のURLへ指定したり、HTMLから自分のパソコン内にあるDVDの映像チャプターなどを指定できる。再生できるパソコンのプラットフォームが限定されることと、ネットワーク環境の差も視聴者環境を選ぶことになる。

ゲーム機でDVD映像を利用する方法としても知られている。

sDVD:ネットワーク環境にあるDVDをストリーム・ビデオで利用するもの。

サーバーにDVDイメージを置き、ネットワークから視聴できる。eDVDが自身のパソコンにあるDVDを利用するのと違って、ストリームビデオコンテンツにメニュー分岐をオーサリングできる。LANなどの広帯域ネットワークであれば標準のDVD画質を利用することが可能だ。インターネットなどの狭帯域ではMPEG2のビットレイトを下げてさらに圧縮を行う必要もある。

sDVDもeDVD同様のWebコンテンツ制作と連動した演出デザインを行なうことができる。

ここでも映像コンテンツをネットワークで扱う世界がまっているのだ。

今月よりストリーミングビデオを連載とさせていただいたので、来月は、さらにネットワークでの映像コンテンツ配信に関係するビジネスモデルを紹介したい。

読者の皆さんからの問合せにも対応したいと思う。


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