高品質WMV Digital Cinemaエンコード時代の幕開き
マイクロソフト社 Windows Media Encoder V9

 

2002-10-01
尾上泰夫

 


マイクロソフト社からWindowsMedia Encoder V9(開発コードCORONA)が登場した。ハイビジョン、そして5-1サラウンドまで対応する高品質なエンコードを可能にしている。いよいよ映像制作のプロの方々が活躍する時代が来ているのだ。


ちなみに、マイクロソフト社では、すでに各地の映画祭でWMV Cinemaを上映。
特に「Wendigo」は、映画館3館でWMV上映された世界最初の映画となった。
また、BMW社との共同で全米25館の映画館で8本のショートフィルムをHD(WMV)で上映している。この映画館のWindows Media Video(WMV)再生設備はそのまま常設され、今後のWMV Digital Cinemaに利用されるとのことだ。
http://www.bmwfilm.com
よく、ビデオ制作のプロの方から、ネットワークによるビデオ配信は、品質の面で否定的なご意見を良く聞かれたが、ブロードバンド時代を迎えた日本の都市部は、世界でも類を見ない高品質なラストワンマイルを有するインフラが用意されている。従来の低画質エンコードでは必要なかったビデオ素材の扱いが、今後、おもちゃではなく本格的な映像機器を要求されるようになってきているのだ。
早速、WindowsMedia Encoder V9を起動してみよう。


分かりやすく親切なウィザードから、素材のトランスコードや、テープデバイスからのキャプチャー、ライブのブロードキャストなど作業を選択できる。


次に取り付けているキャプチャーデバイスを選択する。当然HDなら、それを可能にする周辺環境が必要だ。加えて強力なCPUと、HDなどのハイエンドキャプチャーボードを装備すれば、マルチパスのエンコードを行うことができる。
現在、サンプル映像などの製作工程では、AccomなどのHDディスクレコーダーに1080・24Pで取り込むことで、コマ落ちなどの品質劣化を防いでいる。収録されたデジタル素材をAvid DS/HDノンリニア環境で編集、WindowsMedia Encoder V9へデータで渡す。
また、オーディオはProToolsなどから24bit/96khz 6WAV PCM非圧縮ファイルで取り込み、同じくWindowsMedia Encoder V9へデータで渡す。
残念ながら今回筆者はSDで画面だけ試してみたい。
ウィザードを進めると、従来のWindowsMediaサービスでは、PULL型での対応しかサポートされていなかったが、次世代の.NetServerへの布石が明確なPush型のエンコード・ブロードキャスト(ライブ配信)が用意されている。

さらにウィザードを進めると、配信ポートの設定を行える。
注目したいのはエンコードオプションでVideoに「HD quality」が出現し、Audioには「multi-channel surround sound」が出現するところだ。


レートを確認すると、5393kbpsと確認できる。
この品質のリアルタイムエンコードは、残念ながら筆者のプアなマシン環境(PIII/1G-Dual)では実行できない。
WindowsMedia Encoder V9のメイン画面に到着すると、「Properties」設定のボタンと、「Start Encoding」ボタンがわかりやすく並んでいる。


「Properties」では、ソースの選択から出力、圧縮、サイズ、メタ表記などタブが並んでいる。
インターレス処理されているSD素材なら「Deinterlace」は欠かせない。コンピュータ画面はプログレッシブなのだ。また、映画のテレシネ素材なら24コマから30コマへ調整した余分なコマが圧縮の邪魔になるので「Inverse telecine」も重要な選択だ。


WindowsMedia Encoder V9で追加された重要な方式で、プラグインによる機能追加が上げられる。標準で利用できるフィルターもご覧のとおり、さまざまなケースに柔軟な対応が可能になっている。

また、サードパーティーが自社機材に合わせたさまざまな特徴をエンコード作業に持ち込めるので、余計なプログラムを開発する手間が省け、品質向上に追い風となる。
残念ながら筆者のプアなマシン環境(PIII/1G-Dual)ではこれも選択すると実行できない。(エラー表示)


推奨は(P4xeon/2.4G-Dual)から上の世界で可能な力技なのだ。
「Start Encoding」ボタンを押すと、エンコードが開始される。


シンプルなエンコードを確実にこなしてくれるWindowsMedia Encoder V9は、ポストプロダクションに携わる人、必見のソフトと思う。新しいビジネスチャンスが、この分野には待ち構えているかもしれない。


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