STREAMING MEDIA WEST 2000

オーサリング時代到来のWebCast

2000-12-28

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尾上泰夫

 

師走の慌しい中、STREAMING MEDIA WEST 2000がアメリカ西海岸、サンフランシスコから国道101号を南に下がった町サンノゼで行われた。10月にWEB Video Expo がロングビーチで行われたばかりなので、1、2ヶ月たっただけだからそう内容が変わらないだろうと思っていたが、これが大違いだった。

まず、10月には殆ど出展されていなかったWeb Castのオーサリングソフトが大挙登場した。この場合オーサリングとは、ビデオ画面 とサーバーからのフィードバック情報などの不付加価値情を表示する画面とリンクの設計作業だ。リッチコンテンツデザインの生産性を向上するために大変有効な道具だ。ウェブのページの中に画面 をはめ込むエンベッド処理や、ビデオの時間軸に他のコンテンツを同期させるには、SMILなどちょっと面 倒なプログラムを書かないと実現出来ない。そのマニアックな、難しいと思われていた作業を一気に簡単にする技術を翌日にでも提供してくれるのがコンピュータの進歩を感じる醍醐味なのかもしれない。

今ではワープロ感覚でホームページを作って、動画映像をも流せるようになってきた。

映像を流す為の作業、制作作業がものすごく簡単になってきたのだ。

今回一番のポイントというのは、まずオーサリングソフト、数がいきなり増えて登場してきた。もうひとつはエンコーダー、さまざまな業務用途を意識した実践的なものがものすごく進歩した。そして3番目にデータベース、映像以外のコンテンツ素材を、いちいち手で貼っているという作業では長期的な継続が困難だ。ある動画面 に対して必要な同期コンテンツが自動で出していくという考え方を支えるのがデータベースだ。

環境面で目立っていたのは、コンテンツデリバリーネットワークの充実だろう。余っている回線という言い方は失礼だが、衛星回線がかなりダブついている現状を有効に利用している。せっかく星をいっぱい打ち上げて、上から放送しようと、たくさん回線は用意されてはいるが、球が足りない状態だ。

プロバイダーにエッジキャッシュサーバーを配置し対して衛星から映像を落とす映像配信が可能になると、プロバイダーから先、家庭までは高速回線が繋がっているケースが地域単位 で今後かなり出てくるので、そこに衛星からリッチコンテンツを配信するビジネスモデルが成立してくるのだ。

実際に家庭に高速回線が繋がるというのは、ここUSAではCATVがもっとも得意な分野だ。日本でもチャンネルサプライヤーであるキー局から衛星にアップリンクして、エッジキャッシュサーバーを持っている所、そこが地方局であり、プロバイダーにもなっている、そういう形に上手く化けると非常に面 白い立場になれるはずだ。

展示されている放送機器でも、専門のメーカーがあっと言う間にWeb放送キットを作り始めているのを見るにつけ、潜在需要の大きさを感じる。

それでは、展示を見てみよう。s

ここでもポータブルの生Web放送システムであるストリームジェニーが人気を博していた。

ピナクルシステムズという会社は、もともと放送用プロダクションDVE、キャラクタージェネレータを作っていたわけだが、その部品を利用して、今だと品質的にはオーバークオリティーだが、これ一台あるとライブの中継システムが完成という製品を展示してい

る。

また面白いのが、テレビ会議システムとの連結がある。テレビ会議は独自転送方式を使用しているので、テレビ会議同士はうまく繋がるが、他のシステムとは繋がり難かった。それを簡単にWebストリームに流してしまうリアルタイムエンコードシステムも出てきた。

これはアドビのプレミア6.0新バージョンだ

。パソコン上のビデオ編集ソフトとしてポピュラーだが、Webストリームのオーサリング機能を追加してきた。画面 のボタンを押してすぐにムービーを切り替えるという機能を提供

できるようになってきている。

MPEG4のエンコードでも、携帯電話やPDAなど、いろいろな転送スピード、フレーム数に応じたストリームを全部一台で作ってしまう。

これは少し違ったアプローチだ。今まではコンピュータ画面 のブラウザーの中に、映像画面があるが、ここは考え方が違う。全体の画面をステージに登場人物が出てくる。

 

 

 

windows mediaのスキンをモディファイして自分の勝手に使えるような状態にして新たな商品にしている。

色々なテキストコンテンツを、Webブラウザーを開くのではなく、windows mediaプレーヤーの機能としてHTML表示がある感じだ。このアプリケーションの中にストリーム映像と他の画像を組み合わせて、テキストを同期させるという考え方だ。

コンパックのポケットPCへワイヤレスでストリーム映像を流している。それと他社の物と動作の比較をして見せていた。インドの会社は、パケットをいかに効率よく流すかという技術に関して、今のところうちがナンバーワンだと豪語していた。

放送番組コンテンツに対してストリーム用の物を殆どリアルタイムで作って流すというようなことをしていた。地上波で流していく番組をそのままストリームで流す。同じコンテンツだが、素材そのまま流れるわけでは決してない。色々なデータが検索できるようにデータベースをリンクするという。

画質さえよくなれば、なんらテレビ放送に頼る必要がなくなってくる。2000/12/は、そのぎりぎりの際なのかもしれない。今の伸び方を考えても、去年一年間でVHSの画質を出すために必要なビットレートがどんどん下がっている。また、回線の値段もどんどん安くなる、という双方の流れを考えていくと、あと1、2年しかテレビのアドバンテージがないかもしれない。

ハイビジョンが高品質なテレビの切り札になっているが、ハイビジョンといっても、たかだか1920位 のサイズが出せるパソコンであれば同等の画質は難しい話ではない。もともとプログレッシブだからインターレースのNTSCを画質でこえるのは時間の問題だ。

同じ勢いでいけばあと何年先にハイビジョンを越えてその後テレビの放送では追いつけなくなるだろう。

色々なフォーマットの変換作業自体を外注してやる会社が出来てきている。

携帯電話にコンテンツを配信して表示しようと思っても、ある携帯のキャリアーとあるキャリアーとでは方式が違う。また、PDAに出したい、パームトップみたいな所にだしたいもしくはポケットコンピューターに表示したい、皆それぞれ違う。

コンテンツを色々なプラットフォームにのせるのに手間がかかる。その辺を一個のフォームでつくっておけば、どのプラットフォームでも対応できるというようなシステムが、今レンタルで出てきている。アプリケーションサービスプロバイダーの典型だが、Webのページさえ作ってあれば、それをあるキャリアーの携帯に表示する場合、Webの要素を何文字に対応させて携帯に持っていく、ここの画像は変換させてこの大きさにしてしまう、など、もし株式の関係情報であればリアルタイムで数値情報をプッシュで配信、というような変換サービスを専門にやっている会社もすでに存在する時代なのだ。

2001年にも2月から頻繁に世界中で開催される予定のStream Media関連イベントは、ブロードバンド時代を迎える日本の映像制作にかかわる人たち必見のイベントと言えよう。

 


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