NAB2001に見る

「ブロードバンド時代のハイレベルエンコード 

2001-05-05

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尾上泰夫

今月は、先月に引き続き業務レベルでのエンコード作業をNAB2001に出展された最新のシステムを紹介しながら考えてみたい。

どの方式が本命か?という論議より先に、コンテンツはエンコード処理してさまざまなフォーマットで扱えるように習慣化する。これこそ、これからのクリエーターの標準になっていくスキルに違いない。フォーマットの違いによる演出の感覚を鍛えていくのに絶好の時期がやってきた。

充実した構成のFlipFactoryPro

先月も紹介したサーバーでトランスコードを行うTELESTREAM社のバージョンアップはこの分野、先行しているメーカーだけに充実している。(トランスコードはデジタルデータのフォーマット変換)

FlipFactoryProはマルチフォーマットエンコードが自在だ

より見やすい高品質な画像つくりのためにカラーコレクションなどのフィルター処理をかけることもできる。現在、ストリーミングフォーマットとしてRealVideoWindowsMwdiaQuickTimeを全て同時にサポートしている貴重な存在だ。

サーバーに処理させるデータはさまざまな方法で送り込むことができる。

高品質なClipMailPro(上)と、持ち運び自在なClipRemote(下)

放送局仕様の50MBPS品質を可能なClipMailProは、本体と専用のコントロールユニットに分けられる。

もちろんパソコンから遠隔でコントロールも可能だ。

ClipMailの専用コントローラーとパソコン用ソフト

キャプチャーするビデオはデッキコントロールが正確に可能だ

VTR制御して正確な取り込みをバッチ処理で行うことができる。ClipMail同士でビデオFAXのように遠隔地へNTSC映像を転送する作業にも利用できる。

コントローラーでビデオの送り先を示す

ロゴなど任意のウォーターマークのキー合成が取り込み時に可能なので、権利関係を主張するためには有効な仕様だ。さらに屋外に持ち運び便利なClipRemoteが登場した。エンコードと転送を可般形のシステムで野外に持ち出せる。PAL素材も自動的変換してNTSC再生可能なので非常に便利だ。

 

DPSからはディスクレコーダーや、ノンリニア編集で有名なRealityボードを利用したハードエンコーダーシステムを発表した。

Uと2UのラックマウントシステムになったDPSのエンコーダー

UのユニットにDVSDIのインターフェースを持ち、1Uのユニットにはアナログのみの構成でシンプルに構成できる。1ユニットから10ストリームほどの出力が可能だ。ラックに多数搭載できる形状なので、コントロールも便利なソフトを用意している。

エンコード機器を一括制御できるコントロール画面

DPS NetStreamerと呼ばれる専用のコントロールソフトは数百のエンコーダーユニットもネットワーク経由で制御が可能になっている。

わかりやすい画面のライブエンコーダーCleanerLive

Media100社からDV入力のライブ映像をリアルタイムのエンコードでRealWindowsMediaにマルチレートで出力できる商品も登場した。わかりやすいインターフェースで簡単にライブ放送を実現できる。

アクセラレーターで高速処理が期待できるファイルトランスコーダー

CleanerXLさらに、バッチ処理のできるソフトトランスコーダーとしてポピュラーなCleaner5へ、アクセラレーターCrystal ICEを付け、通常の5倍以上高速でトランスコード作業を行うことができる。場合によってはリアルタイムでトランスコードも可能なこの商品はWindows2000のみの対応となる。

 

WebCastとは少し変わっているが、SONYからも参考出品のソフトウェア郡が登場した。

SONYの提案するコラボレーション環境

MUP-2000は画質を重視したソフトベースのビデオサーバー/クライアントシステムだ。MPEG-2DV25DV50などの高品質データをネットワークでやり取りする。入力にはMUPA-502というTARGA3200ベースのキャプチャーシステムでデータを取り込む仕組みだ。大規模なアーカイブにMUS-2000という512M1Gという大容量のキャッシュを持ったネットワークストレージシステムを用意して複数のクリエーターのエディット、コンポジションのベースになる仕組みだ。コンテンツをオンデマンドの提供するマネージメント環境の提案である。

まだ開発途中なので大きく仕様も変わっていくことだろう。

放送機器の老舗GVGからはAQUAと名付けたプロトタイプのエンコーダーシステムが登場した。

放送機器の老舗GVGからもエンコードシステムが登場した

完全な放送業務との融合を目指したハイエンドシステムで、ニュース番組などの放送とリアルタイムでストリームを行うことを提案している。

プロトタイプのGVG AQUAを搭載するボックス

特徴はやはり高品質で、大きなボックスにグラスバレーキャプチャーカードを複数(4〜)用意してハードウェアで取り込みの前に信号のクリーニングを強力に行う。

POST-CLEANIG処理でエンコード前に綺麗な画像へ

カラーコレクションなど、従来PCベースで再生される映像で我慢をしていた品質のレベルを大幅にアップしていく。

 

変わったところで、KDDIではMPEG-1,2,4のエンコード、オーサリング、アーカイブを行うシステムを発表していた。

ブロードバンド通信の時代にKDDIは開発環境を提供している

ご存知のように次世代携帯電話はMPEG-4で配信されるとされているので、そのためのエンコード、オーサリングシステムとして開発環境を提供している。

次世代携帯で映像をサポートするAUの制作環境

現在、KDDIではAUのコンテンツ制作環境の用意が進んでいる。

ビデオアーカイブのデータベース検索

SQLデータベースを連動した画像アーカイブや、携帯電話用のオーサリングシステムなど、コンテンツ制作に威力を発揮するだろう。

 

現在、さまざまなフォーマットのデジタルデータがメディアに合わせて使われている。従来のアナログビデオはNTSCを覚えておけば、機器の調整など共通の調整原理が通用したが、ネットワークを利用するWebCastでは、その伝送方法や、データの圧縮方式など、さまざまな組み合わせがあるのだ。

ブロードバンドでさまざまなデバイスに映像が乗る

電波による放送という枠組みから、今後、映像コンテンツは入れ物を変化させ、さまざまなアプローチで私たちの生活に接点を作り始めている。


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