コンテンツデリバリネットワーク
「映像ビジネスを支える配信効率と課金性能」

2001-07-02
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尾上泰夫

 

シンガポールで行われたコミュニケーションEXPO

既存の放送や、ビデオテープ、DVDなどのパッケージ販売と異なるストリーミングビデオの特徴を考えてみたい。
ネットワークで映像配信する最大のメリットは視聴者の捕捉であると言って過言ではない。この点を考慮しない配信は、ただの自己満足、パケットの無駄使いといわれてもしようがない。視聴者のリクエストと映像の配信記録が価値を生み出すシステムとしてプロファイリングを含めてトータルシステムを計画する必要がある。

個人認証と課金が有償映像コンテンツのベース

また、映像制作者から直接視聴者へ繋がるダイレクトな反応を制作へ反映することが可能な点も見のがせない。連動することが演出可能になるには、しばらく実験的な試みを必要とするだろう。分岐映像は演出のコストを強いるので、現状は実現が難しい分野だ。だが、適切な設問に対する反応期待は従来のパッケージ系のインタラクティブコンテンツとは違った情報を与えてくれる。
ここで、これらの特徴を生み出している配信の仕組みと、効果的な課金方法を紹介しよう。
インターネットを中心とするデジタルネットワークはエンドto エンドのコミュニケーションを可能にしている。つまり、制作者と視聴者の距離が、限り無く近いのだ。とは言っても実際のネットワークにはブロードバンド時代を迎えつつある昨今であっても、映像などデータが重いリッチコンテンツを多数の視聴者へ届けることが困難な場合が多い。データの転送量は視聴人数分の正比例増加をしていくから回線容量を簡単に超えてしまうからだ。
直接視聴者と繋がる反面、視聴者数に対応したデータ転送量を確保しなければならないことが、物理的な限界を招いている。単純にインターネット放送は安価だと思われている節があるが、視聴者数と回線帯域の維持費を考えるとライブではテレビ放送の波代の方が安価な場合が多いのである。
テレビCMの場合でも、同数の視聴者へ電話をかけるコストを想像していただきたい。しかし、それでも視聴者と直接接続するメリットは捨てがたい。
これを解決したのがエッジキャッシュサーバーの存在だ。
起点となるサーバー1台からすべての視聴者を接続するのではなく、効果的な分配ポイントに代理のサーバーを設けて、そこから視聴者との接続を行うのである。
これはちょうど従来ある放送のキー局と中継局のネットワークのような存在だ。

コンテンツデリバリネットワークを表現

コンテンツサーバーとエッジキャッシュサーバーの組み合わせでデータを配信していく仕組みをコンテンツデリバリネットワークと呼び、現在多くの企業が熾烈な提携合戦を繰り広げている。
1対多数の通信で圧倒的に有利なのは衛星からシャワーのように同時に高速で多地点受信できる仕組みである。

エッジキャッシュサーバーとコンテンツエンジン

しかし、電波でデータを振りまくだけでは先に述べた視聴者の把握が困難になってしまう。そこで巧妙にエッジキャッシュサーバーからログを回収する方法があり、アナライズすることで視聴者ニーズを具体化していくことが可能になっていくのだ。これがローカルリダイレクションと呼ぶコンテンツ要求による反応の仕組みだが、一方要求だけは大本のサーバーへリクエストすることで反応するグローバルリダイレクションと呼ばれる機能も見のがせない。
今まではサーバーの負荷分散の手法として利用されてきたローカルディレクターによるサーバーの振り分け機能を拡張して、コンテンツデリバリネットワークのエッジキャッシュサーバー振り分けを行うことで、視聴者に最適な接続サーバーを案内することも可能になっているからだ。
ローカルリダイレクションとグローバルリダイレクションを組み合わせて利用することで、効率良く多くの視聴者からプロファイルを行うことができる。
さらにリクエストのデータベースは顧客の嗜好を明確に表わすので、効果的な広告の指標となることは言うまでもない。プロファイルを元にターゲット化された広告を行える点は、民間放送の視聴率にかわる大きなビジネス指標がここにあるのである。
このように配信効率は飛躍的に向上しつつある。テレビジョンの品質を追い抜くのは時間の問題で、近い将来はハイビジョンも取り込むことが夢ではなくなっているのだ。

また、2001年秋に始まる第3世代携帯の能力は映像端末として利用されることは明確である。

日本からFOMAが携帯電話の未来を先取り提案

世界に先駆けて日本で開始されるサービスに映像コンテンツ制作者の方々はどのように参画していくのだろう。

次世代携帯のビデオ画面

携帯情報ツールに配信される映像コンテンツ

コンテンツサーバーとエッジキャッシュサーバーの組み合わせは、そのまま携帯電話をネットワーク端末と同じ土俵にのせてしまう。しかも国際電話の感覚ではなくインターネットを利用し、世界から安価な情報を受け取れる。

携帯電話でのビデオ画面

ここで、コンテンツの配信と切り離せないビリング(課金)システムについても見てみよう。
従来の金融機関の間でやり取りを行っている決済情報の一部がコンテンツデリバリネットワークと接続することで、視聴者からの課金や、代金決済の機能が有効になってくる。
例えば銀行やカード会社が個人認証と決済情報をすでに提供している既存の様々な課金システムといかに効率良くコミュニケートできるかがネットワーク機能として重要になっているのだ。課金性能の競争も始まっている。さまざまなインテグレーションがコンテンツ発信者サイドの要望に応じてカスタマイズされて連結していくことができる。
視聴者への課金と同時にコンテンツホルダーとしては集金のシステムとして映像ビジネスのインフラは整いつつある。著作権情報をもとに、視聴された数量から著作者へ還元する仕組みである。

次世代携帯PDAの提案

次世代携帯audioの提案

ポータルサイトで稼動させているシステムはゲートを介して既存の決済システムと接続し、従来の店鋪販売システムをいきなり世界規模の販売システムにスケールアップすることも可能なのだ。
多くの企業がコンテンツポータルの座を狙って熾烈な競争を繰り広げている。
この中で日本の映像制作を担っている諸兄はどのような立場を勝ち取ろうとしているのだろうか?
さて、お気付きと思うが、すでにインターネットは世界規模のネットワークを実現している。そこへリッチコンツを配信する仕組みも効果的に融合されてくる。つまり、世界規模の放送ネットワークも可能な時代になっているのだ。