ノンリニア編集、時間節約の誤解


もともとアナログシステムだった映像制作の仕組の「一部分デジタル化」とも言える現在の環境で、パッケージ商品の様なノンリニアシステムの真価を評価することは難しい。巷でセールストークになる「テープのような巻きもどし時間がなく迅速な編集」というほどには実際の編集時間が短縮されないことは経験者は知っている。
たしかに様々なエフェクトも可能だが、従来の専用機で行うエフェクトがリアルタイムで行えたのに比べてパソコンベースでのノンリニアシステムは洒落にならないほどの時間を待たされるものが多い。また、周辺の連結システムの問題から編集作業に入れるまでの時間や、他のスタッフによる別素材作業への移行がテープベースのように単純にはいかない。βカムなどの放送用ビデオデッキならプレイボタンを押したらほとんど即座に再生画面を提供してくれるが、カット数の多い編集ではノンリニアシステムの再生開始までが重くリズムが乱れる。素材の確認画面が多くなると表示に時間がかかる。など現状のウィークポイントを指摘はするが筆者は決して現在のノンリニアシステムを否定するつもりはない。
本来、編集時間の多くは「テープのような巻きもどし時間」などの時間で使っていた訳ではない。演出のためのカットワークに様々な可能性を繰り返してみたり、エフェクトの具合を微調整したりする「こだわり」の時間であったはずだ。
幸いにして繰り返し作業が迅速に行え、微調整を自分の手で行えるノンリニアシステムを手にした演出家が、一層「こだわり」を発揮するのは当然のこと。
「やりなおし」を諦めずにできるシステムは、管理者の思うほど全体の制作時間の短縮ができない作業形態を生み出すものだ。

 




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