メディアコストの確認


物理単価だけでないコスト


さて、ここで私的財産として素材を保管する場合のコストを考えて見よう。
はたしてハードディスクに記録された状態で長期間保存が可能だろうか?。
現在のテープとの時間単位価格での差を考えると、そんな贅沢はできない。
また、撮影されてきたテープ素材をワークテープにコピーすることと同じように、作業用の素材をハードディスクへコピーする作業が必要(HD収録カメラは別)なのは当然だが、素材が多くなるとハードディスクへは全部を入れられない場合も多くなる。深刻なのは、従来この作業を行う時間は演出スタッフが立ち合う必要なく進行していたのに、記録量にシビアなノンリニアシステムでは、直接素材を確認して立ち上げる部分を選択しなければならない点かもしれない。しかも従来のテープのコピールームとちがって、その作業にもシステムの環境を必要とすることもコストに考えておかねばなるまい。
こうして見ると、コストばかりかかってあまりありがたくないノンリニアシステムだが、実は大変に重要な要素がこの作業の中には含まれているのだ。
ここにも「素材の権利」が関係してくるが、もし、テープベースで編集している現在の制作環境で的確な制作情報をテープアドレスとシンクロして残すようにするとしたら膨大な映像素材ライブラリーの構築作業が新たな時間に必要となる。シーンに対して文字表現の曖昧な映像ライブラリーから制作目的にかなうシーンを探し出すことは容易ではない。
映像を必要とする人間の目で、的確に表現された記録でなくては私的財産として素材を再利用する目的に大きな弊害となる。ノンリニアシステムは、編集をしながらデータベースを作り続けるシステムとも言える。コンピュータに保存し続けたい情報は、画像その物のデータではなく、それを差し示すデータに大きなメリットがあるのだ。

 




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